変形性膝関節症を評価する。疼痛源の内訳と圧痛部位、保存と紹介の線引き

膝OAの痛みを「関節の中だけ」で説明しない

変形性膝関節症(膝OA)の痛みは、関節の中だけで決まりません。疼痛源は関節内外に分かれ、圧痛は膝周囲の多くの部位に出ます。どこが痛みを出しているかを部位で整理すると、保存療法の的を絞りやすく、紹介の判断もしやすくなります。膝OAを疑う段階の話は患者向けの記事に送り、ここでは評価の組み立てに絞ります。

膝OAを、疼痛源の内訳・圧痛部位のマップ・保存と紹介の線引きという順で、評価の組み立てとして整理します。

疼痛源:関節内と関節外を分ける

膝OAの疼痛源は、関節内組織が約61%、関節外組織が約32%、残りが疼痛伝達系(神経系)などと整理する報告があります。

  • 関節内(約61%):滑膜、軟骨下骨、十字靭帯、半月板、膝蓋下脂肪体、関節包など
  • 関節外(約32%):筋肉、骨髄、骨膜、筋膜、腱など
  • そのほか:疼痛伝達系である神経系など

関節外の組織が主な疼痛源の場合、広範な痛みを長期間認めることが多いとされます。画像の変形がそのまま痛みの場所を指すわけではないので、関節内外のどちらが痛みを出しているかを評価で分けることが、介入の的を決める出発点になります。

まなぶ先生まなぶ先生

画像で変形があると、つい関節そのものの痛みと考えてしまいます。

教子先生教子先生

私は広い範囲が長く痛む人ほど、関節の外も丁寧に触るようにしています。

瀬谷崎瀬谷崎

その感覚は理にかなっていますね。膝OAの痛みは関節内が6割くらいで、残りは関節外や神経系。とくに関節外が主体だと痛みが広くて長引きやすい。だから画像の変形だけで痛みの場所を決めず、関節内なのか関節外なのかを触診で分けると、運動療法でどこを狙うかが見えてきます。

圧痛部位のマップ(膝周囲を分けて触る)

膝OAでは膝周囲の多くの部位に圧痛が出ます。前・内・外・後ろに分けて系統的に触ると、関節内外の見分けと介入対象の特定がしやすくなります。

  • 前面:膝蓋靭帯、膝蓋下脂肪体、膝蓋大腿関節(PFJ)の内側・外側膝蓋支帯
  • 内側:内側半月、鵞足、内側広筋(VM)付着部、内転筋管、内側側副靭帯(MCL)、半膜様筋停止部
  • 外側:外側半月、外側広筋(VL)付着部、腸脛靭帯(ITB)付着部、外側側副靭帯(LCL)、腓腹筋外側頭・ファベラ腓骨靭帯
  • 後面:膝窩筋、腓腹筋内側頭

圧痛部位を前・内・外・後ろで整理すると、たとえば前面の膝蓋下脂肪体や内側の鵞足のように、関節外で介入の余地が大きい組織が見えてきます。膝蓋下脂肪体については別記事に詳しいので送ります。

まなぶ先生まなぶ先生

圧痛が何か所も出ると、どこから手をつけるか迷います。

教子先生教子先生

私はいちばん再現性のある圧痛と、その人の動作でつらい瞬間が合う部位を優先しています。

瀬谷崎瀬谷崎

それでいいと思います。圧痛は一か所に決まらないことが多いので、動作での痛みと圧痛が一致する部位を主役に置く。鵞足や膝蓋下脂肪体のように関節外で触れて変化を出せる組織は、運動療法と相性がいい。全部を均等に触るより、痛みの再現と圧痛が重なるところに絞ると、介入が散らからずに済みます。

評価の流れ

保存と紹介の線引き

多くの膝OAは運動療法を軸にした保存療法が基本です。一方で、保存だけでは対応しきれない状況もあり、整形外科や手術の相談につなぐ目安を持っておくと、抱え込まずに済みます。

  • 関節内遊離体や半月によるロッキングがある
  • 変形や軟骨の減少が明らかで、保存での介入成績が不良
  • 中等度以上のROM制限が残存し、長期の膝痛が続く
  • 比較的若い世代で活動的な生活を強く希望し、保存で限界がある
受診の目安

これらの項目は、手術の適否を私たちが判断するためのものではありません。保存療法の反応が乏しい、ロッキングがある、変形やROM制限が強いといった状況では、整形外科につないで選択肢を一緒に整理します。患者さんを保存療法だけで抱え込まないことが、結果的に本人の選択肢を広げます。

膝OAを「関節内外の疼痛源」と「圧痛マップ」で評価する

膝OAの痛みは関節内が約6割、関節外が約3割で、関節外主体だと広範・長期化しやすい傾向があります。圧痛を前・内・外・後ろで整理して関節内外を分け、動作での痛みと一致する部位を主役に運動療法を組み立てます。保存の限界が見えたら、抱え込まず整形外科へつなぎます。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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