凍結肩の3タイプ分類を臨床でどう使うか。治り方の個人差と炎症期の過ごし方
セラピスト向け
同じ凍結肩でも、進み方は分かれる
数か月で回復する人と、2年以上かかる人。同じ凍結肩と呼ばれる状態で、なぜここまで経過に差が出るのか。前方・後方・HS(エイチエス)の3タイプという見方と、炎症期の過ごし方の影響について、とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで実際に出た質疑をもとにたどります。
凍結肩が炎症期・拘縮期・回復期という経過をたどることは、凍結肩は時期で対応が変わるで扱いました。この回で出たのは、その先の疑問です。時期の枠組みは同じなのに、治癒までの期間が数か月から2、3年までばらつくのはなぜか。そして、タイプ分類は臨床でどこまで使えるのか。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎3タイプの目安
- 前方タイプ: 大胸筋など前面の筋の関与が中心。圧痛が手がかりになる筋性のタイプ
- 後方タイプ: 後方の関節包の拘縮が中心。肩甲骨まわりの可動域制限が出やすいタイプ
- HSタイプ: ストレス関連の訴えを伴うタイプ。心理社会面の聴き取りが手がかりになる
急性期(炎症期)の段階でも、大胸筋の圧痛、肩甲骨の可動域制限、ストレス関連の訴えといった兆候は観察できます。確定的に分類するというより、どの組織への介入から試すかの見当を、早めに持つための見方です。
全員がきれいに3タイプへ収まるわけではなく、しっくりくるのはおよそ6割、残りは判別しにくい、という感覚も添えられていました。特徴的なところだけを拾って見る、というくらいの使い方が現実的です。
可動域制限は、痛みによるものかもしれない
検討の中で紹介された話に、麻酔下での可動域を調べた研究がありました。外転90度も届かないほど制限のかかった凍結肩の人たちを対象に、手術のための全身麻酔をかけた状態で肩を挙げてみると、割と上がったというのです。
ここから、凍結肩の可動域制限は関節包性のエンドフィール(動きの終わりの手ごたえ)というより、疼痛によるエンドフィールなのではないか、という仮説が語られました。
あくまでカンファレンスで共有された見立てですが、もし痛みが取れれば動くのなら、痛みを減らす手立てには意味がある、という発想につながります。
長引きやすい病態なので鎮痛薬を勧めにくい面はあるものの、炎症期の後半あたりからは、痛みを減らす介入で後の長期化を和らげる余地があるかもしれない、という話でした。
経過の個人差は、タイプと炎症期の過ごし方で読む
治癒期間のばらつきについて、挙がった読み筋は2つです。
- 原因のタイプ: 筋性(前方タイプ、大胸筋タイプ)は改善が早い傾向があり、関節包性(後方・HSタイプ)は時間がかかりやすい
- 炎症期の過ごし方: 経験則としての目安があり、動かし続けていた期間の1.5倍から2倍くらいが炎症期の長さの目安になる印象だという
3か月ほど動かし続けた人なら、1か月半から3か月くらいは炎症期が続くイメージ、という具合です。逆に、初期にしっかり安静を確保できた人は、その後の拘縮期・回復期が短くなる印象がある。
いずれも臨床経験ベースの見立てですが、炎症期に無理に動かし続けると長引きやすい、という点は患者説明でもそのまま使えます。
見落としがちな要因として、家族や職場の理解も挙がりました。安静が必要な時期に休める環境があるかどうかが、結果的に治癒期間へ響きます。経過の見通しを本人だけでなく周囲と共有する意味は、ここにもあります。
反対側の肩にも発症する例は複数の研究で報告されており、臨床感覚ではおよそ2〜3割。機序は分かっていませんが、糖尿病のある方で発症率が上がることは知られています。男女比や利き手との関係など、分かっていない点も多い病態です。片側が落ち着いた後も、反対側の訴えには早めに気付けるとよいところです。
加齢との関係については、一つの仮説が紹介されました。胸椎の後弯が進み、肩甲骨が内旋・外転する姿勢になると、上腕回旋動脈の血流量が下がる。それが発症に関わっているのではないか、という筋道です。
これなら年齢が上がるほど起こりやすい説明はつきやすい一方、なぜ女性や非利き手側に多いのかは、はっきりとは分かっていません。原因不明であること自体が、他疾患との鑑別の手がかりになる、という捉え方もできます。
手技の細部で、痛みの誘発を避ける
実技面の質疑もありました。肩甲骨モビライゼーションで痛みが誘発される場合、原因は肩甲骨側というより、操作に伴って上腕骨頭が急に動くことにある場合が多い。
- 肩甲骨を無理に入れ込まない肩甲骨を無理に内側縁へ入れ込まないようにします。
- 上肢を下から支えて他動運動を繰り返す上肢を下から支えてコントロールしながら他動運動を繰り返すと、痛みの誘発を避けやすくなります。
- 「戻すと痛みがない」強度を守る関節包へのストレッチは即時効果が見込める一方、「動作のときだけ痛く、戻すと痛みがない」強度を守ることが条件として確認されました。戻しても痛みが残るなら、それは強すぎる合図です。
慢性化の説明では、言葉の選び方に気を配る
長引く肩では、心理社会面をどう伝えるかも話題になりました。BPS(生物・心理・社会)モデルの説明で気をつけたいのは、「これで痛みが出ている」という言い方をしないことです。原因だと受け取られると、患者さんの中で気持ちの問題という着地になりかねません。
代わりに、「これによって痛みを何倍にも感じてしまう」「本来これくらいで治ったはずの痛みが長引いてしまう」という表現にすると、慢性化の要因という位置づけが伝わりやすい。
凍結肩のように経過が長い病態ほど、不安が痛みを引き延ばす面もあるので、ステージの説明を最初にしておくことが、患者さんの安心につながります。
分類は断定のためでなく、見当を早く付けるために
3タイプ分類は発展途上の見方で、全例に当てはまるわけではありません。それでも、圧痛・可動域・心理社会面という3方向の観察を早期から持てること、経過の個人差を説明する言葉が増えることには、臨床上の価値があります。
断定の道具というより、介入と説明の見当を早く付ける道具として使うのが、検討の落としどころでした。
瀬谷崎長引いた凍結肩をめぐって、2つの検討がありました。ひとつは3年ほど放置された肩で、最終挙上域の残存制限にどこまで踏み込むかが論点です。内旋症候群や前方すべり症候群の確認検査を他動と自動の両方で行い、陽性なら介入を試す。陰性なら現状維持も妥当で、3ヶ月ほど期間を区切って試し、改善が乏しければそれ以上の可動域拡大は難しいと患者にあらかじめ伝えておく、という進め方でした。
もうひとつは拘縮期で改善が停滞した肩です。5度から10度ほどの変化は測定誤差の範囲に入りやすく、精密な計測なしの評価には限界があります。拘縮期の腱板は押しても緩みにくいため、マッサージ的な徒手より関節包ストレッチや胸椎・肩甲骨の可動域訓練を軸に置く。棘下筋の腱板断裂の合併を、ドロップアームサインなどで最初に外しておくことも共有されました。
どちらの例も、他動の可動域が伸びなくても、使用感を上げる工夫(呼吸誘導や肩甲骨のポジショニング、定量的に実感できるセルフケア)を続ける価値がある、という点で一致しています。時期で見え方が変わる凍結肩を、停滞期まで見据える視点です。




