凍結肩へのハイボルテージ・超音波・ラジオ波。炎症期と拘縮期で役割をどう切り替えるか
施術・検査ガイド
同じ機器でも、時期で狙いが変わる
凍結肩(五十肩)への物理療法機器は、炎症期と拘縮期で役割を切り替えます。オンラインカンファレンスで実際に挙がった症例相談をもとに、ハイボルテージ(高電圧電気刺激)・超音波・ラジオ波の使い分けを取り上げます。
このコラムでは、凍結肩の症例相談をもとに、物理療法機器の使い分けを取り上げています。炎症期は鎮痛を目的に低周波で長めにかける、拘縮期はラジオ波を中心にリリースと運動併用へ切り替える、という時期と目的の対応が軸です。凍結肩の分類や病期そのものの解説は凍結肩の3タイプ分類の記事で扱っています。
結論:炎症期は鎮痛が主目的。ハイボルテージや低周波を20分程度と長めにかけながら、患部以外の施術を並行します。拘縮期はリリースと運動併用が主目的。ラジオ波が有効とされ、ハイボルテージはかけながら動かすことで運動恐怖の軽減にもつながります。
時期と目的の対応表
凍結肩に使う物理療法機器は、機器ごとの優劣で選ぶより、いまが炎症期なのか拘縮期なのかという時期の見立てから選ぶほうが迷いが減ります。今回の症例相談でも、質問の中心は「どの機器が良いか」ではなく「この時期にこの機器をどう使うか」でした。
| 炎症期 | 主目的は鎮痛。ハイボルテージ(高電圧電気刺激)や低周波を20分程度と長めにかけ、その間に患部以外の施術を並行します。コッドマン体操(腕を垂らして振り子のように揺らす自主運動)のような積極的な自主運動は控え、安静と疼痛コントロールを優先します。 |
|---|---|
| 拘縮期 | 主目的はリリースと運動併用。ラジオ波が拘縮のリリースに有効とされ、超音波はそのピンポイント版のような位置づけです。痛みが強くなければ、疼痛抑制がメインのハイボルテージの出番は減ります。 |
同じハイボルテージでも、炎症期には痛みを抑えるために長くかけ、拘縮期には動かすための補助へ回る。この切り替えが本記事の芯になります。
炎症期は鎮痛を最優先にする
両肩とも凍結肩とみられる方の相談がありました。手技を入れても痛みが増えないため炎症期は峠を越えたと見立てつつも、痛みが強く、両肩が痛むため寝る姿勢にも苦労している。除痛の手段としてハイボルテージは使えるか、という相談です。
回答は明快で、ハイボルテージに限らず低周波による鎮痛は有効とされる、というものでした。使い方の要点は時間で、次の二段構えです。
- 短時間高出力でまず痛みを抑える1〜2分の短時間高出力は鎮痛効果が高い一方で、持続が短いという性質があります。
- 20分程度の長時間と組み合わせる短時間高出力だけで終えず、その後は貼ったまま、20分程度かけっぱなしにする長時間の使い方と組み合わせます。
かけている20分間は待ち時間ではありません。患部は強くは触れない時期なので、その間に患部以外の施術を並行します。
炎症の強い時期にはコッドマン体操のような自主運動も積極的には勧めず、安静と疼痛コントロールを優先するのが基本線です。
イリタビリティと運動恐怖への配慮
鎮痛と並んで強調されたのが、イリタビリティ(症状の過敏さ)への配慮です。
炎症期を過ぎた見立てでも、痛みを我慢させて無理に動かすと、肩をかばって動かさなくなったり、動かすこと自体への恐怖(運動恐怖)が強まったりと、別の問題を生むリスクがあります。
可動域を広げる場面でも、痛みが出る手前で止めるのが原則です。
ここでハイボルテージにはもうひとつの顔があります。かけながら動かすと、かけていないときより少し動かせるため、「動かしても大丈夫だった」という経験を積みやすく、運動恐怖の軽減にもつながるとされます。
鎮痛のための機器が、運動につなぐ橋にもなるわけです。
拘縮期はラジオ波を軸にリリースへ
もうひとつの症例相談は、発症からおよそ1年が経過した50代女性の凍結肩でした。
- 夜間痛はすでになく、日常生活での痛みも少ない
- 挙上は120度程度
- 1st・2nd・3rdの内外旋いずれにも左右差が残る
拘縮期の後半とみられる段階で、手元には超音波・ハイボルテージ・ラジオ波がある。リリース目的ならどう使うか、という相談です。
回答は、炎症期を過ぎた凍結肩なら3つともフル活用できる、というものでした。この段階での位置づけは次のとおりです。
| ラジオ波 | 拘縮期のリリースに有効とされ、この時期の第一候補に挙がります。 |
|---|---|
| 超音波 | ラジオ波のピンポイント版のような使い方で、狙いを絞って温めたい部位に向きます。 |
| ハイボルテージ | 疼痛抑制がメインの機器なので、痛みが強くないこの段階では使用頻度が下がります。 |
ただし、リリースそのものを物理療法だけで完結させるのは難しい、という但し書きも付きました。拘縮期の可動域改善の中心はあくまで徒手施術で、機器はそれを後押しする補助と考えるのが実際的です。
評価と見通しの伝え方
この相談では、評価の取り方にも助言がありました。挙上120度に見えても、肩甲骨を大きく持ち上げる代償が入っていると、GH関節(肩甲上腕関節)単独の動きは90度に届いていないこともあります。
肩甲骨を固定した状態で測るなど、肩甲骨の動きと分離して評価を取ると、施術の狙いが定めやすくなります。
見通しについては、炎症期の管理のされ方が手がかりになります。
ステージ1にあたる炎症期はおよそ2〜9か月と考えられ、これが2〜3か月程度で収束していれば経過はスムーズで、これからの可動域改善も見込めると伝えてよい、という助言でした。
一方で、外旋方向の制限は後まで残りやすいため、その可能性をあらかじめ伝えておくことも勧められています。良くなる見通しと残りやすい制限をセットで伝えることが、長い経過につきあう信頼につながります。
時期別の使い分けの要点
- 炎症期は安静と疼痛コントロールを優先し、積極的な自主運動は控える
- 鎮痛目的のハイボルテージや低周波は20分程度と長めにかけ、患部以外の施術を並行する
- 短時間高出力(1〜2分)は効果の持続が短いため、長時間の貼付と組み合わせる
- 拘縮期のリリースにはラジオ波が有効とされ、超音波はピンポイントに使う
- 運動併用ではイリタビリティ(症状の過敏さ)を考慮し、痛みが出る手前で止める
- 可動域はGH関節(肩甲上腕関節)単独の動きを肩甲骨の代償と分離して評価する
別の回では、時期の見立てそのものに迷う相談がありました。夜間痛が落ち着いてしまい、凍結肩の典型経過と合わない、というケースです。
検討で挙がったのは、夜間痛の感度・特異度は経験的な感覚として75%程度のイメージで、夜間痛がないことだけでは凍結肩を外せないという見方です。発症からの経過を振り返って炎症のピークがいつだったかを推定し、レントゲンなどで他の疾患が除外できているなら、除外して残った凍結肩として扱う流れが確認されました。
拘縮期に入っている見立てなら、悪化しなければ良しとして、可動域を上げる施術を一度試す方針も挙がっています。施術後に痛みが強まる場合は炎症の広がりにつながるため引き返す、という条件付きです。




