部活でシンスプリントが多発。抜けられない選手の休ませ方と練習量の戻し方
セラピスト向け
シンスプリント多発チームにどう対応するか。休養と段階復帰の現場設計
チームのほぼ全員がシンスプリント(脛骨過労性骨障害)になっているのに、人数の事情で選手を抜けさせにくい。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで実際に挙がった相談をもとに、部活動の現場で成立する休ませ方と練習への戻し方を検討します。
相談のあらましはこうです。ある部活動のチームでシンスプリントがほぼ全員に及び、監督も事態を重く見て、2週間ほど部活動そのものを休みにする判断をしました。その間にしっかり治療をしようという流れです。
ただしこのチームは選手が5人しかおらず、1人抜けると練習が成り立ちません。休養が明ければ、以前と同じ練習環境が待っています。個々の下腿を治療するだけでは足りず、休ませ方と戻し方まで含めて設計する必要のある事例でした。なお、評価と疲労骨折の鑑別は別の記事で扱っているので、本記事は復帰の運用に絞ります。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎説明の軸を「量」から「変動幅」へ移す
検討の中心になったのは、練習がきついから発症するというより、練習量が急に変わる局面が危ないのではないか、という見方でした。この視点に立つと、休養そのものの意味づけが変わります。
2週間、3週間と休ませても、チーム事情が変わらないまま元の練習量へいきなり戻れば、復帰の瞬間にいちばん大きな変動が生じます。休ませたのに、かえって痛みが悪化するおそれすらあるわけです。
週に30%を超えて練習量が増えると発症率が上がる、という報告が話題になりました。「急に増えた分に体が追いつかなかった」という説明は、選手・保護者・顧問の先生と復帰計画を共有するときの軸として使えます。
どの段階で痛みが出るかで、休ませ方を決める
休ませるかどうかの線引きとして、痛みが出るタイミングで切り分ける考え方が共有されました。
- 練習中に痛みが出る段階なら、休ませる方向で考える
- 練習後にだけ痛みが出るなら、負荷とうまく付き合いながら継続も検討する
- 復帰の目安は、ウォームアップで痛みが出ないレベルまで回復してから
残り時間も判断材料になります。高校1年生であれば、1か月休ませても取り返せる時間があります。一方で最終学年の引退前なら、多少の無理を承知で出場を優先する判断もありえます。学年によって最適解が変わるという前提は、先に共有しておきたいところです。
段階復帰の目安。30%以下から週ごとに引き上げる
復帰後にいきなり100%へ戻さず、変動幅を小さく刻むための進め方として、検討では次のような目安が挙がりました。
- 完全休養ウォームアップで痛みが出ない状態になるまで、練習を休みます。
- 復帰1週目元の練習量の30%以下から再開します。
- 2〜3週目50%、80%と週ごとに段階的に引き上げます。
- 4週目痛みの再燃がないことを確かめながら、100%へ戻します。
数字はあくまで検討の場で挙がった目安で、本体は「復帰時の変動幅を小さく刻む」という考え方のほうです。競技や練習内容に合わせて、現場で調整する前提で使ってください。
休ませている間にやること。施術とトレーニング
休養期間は、下腿の負担要因に手を入れる時間でもあります。相談の事例では、下腿の外旋・内旋といったアライメント(骨配列)の崩れがあり、後脛骨筋が緊張しやすい選手という見立てでした。施術として挙がったのは次の内容です。
- 腓腹筋・ヒラメ筋・後脛骨筋の緊張緩和
- 腸腰筋のストレッチ
- 大腿筋膜張筋のリラクゼーション(下腿の内旋アライメント改善とセットで行うという実感が共有された)
並行して、中殿筋・大殿筋・体幹のトレーニングを進めます。下腿だけを緩めて戻すのではなく、股関節と体幹から下腿のアライメントを立て直しながら復帰週を迎える、という組み立てです。
テーピングは舟状骨の挙上と内転で組む
復帰期の保護として、テーピングの話も具体的に出ました。軸になるのは舟状骨を持ち上げる方向のテーピングです。挙上だけで変化が乏しいときは、舟状骨が外転しないよう内転方向へ誘導するテープを組み合わせると、それ一本でずいぶん変わることがあるといいます。
アーチを持ち上げて痛みが引くタイプなら、7〜8割ほどはこの方向で対応できるという経験的な手応えも共有されました。足底へ直接強力に貼るタイプ(各趾から踵へホワイトテープを渡してアーチを作る方法)は、症状が強い選手やなかなか良くならない難治例向けの選択肢です。
舟状骨の真下にパッドを入れ、しゃがんで前へ体重をかけるなどの疼痛誘発動作で痛みが変わるかを先に確かめておくと、アーチ保持が効くタイプかどうかの見当がつきます。
保護者を交えて、現実的な落としどころを探す
練習量の設計は、治療院だけでは動かせません。5人のチームで1人だけ完全休養を通すのは、正論としては合っていても現実には通りにくいものです。この事例でも、シューズやインソール(中敷き)といった練習量以外で動かせる要素を検討したうえで、あとは保護者を呼んで話し合うしかない、という結論でした。
幸い保護者と連絡を取りやすい間柄だったこともあり、チーム事情と回復の見通しを並べて、どこまで休めるか、どこから戻すかを一緒に決めていく方向になりました。監督自身も多発を重く見て休止を判断した事例であり、現場と敵対せず同じ側に立って計画を渡すことが、結局いちばんの近道になります。
戻し方まで含めて、休養を設計する
シンスプリントの多発チームでは、休ませること自体より、戻し方の設計のほうが難しい課題になります。変動幅という説明の軸、段階復帰の目安、保護者を交えた相談。この3点がそろうと、抜けられない現実の中でも打てる手はかなり増えます。
瀬谷崎




