パワーテストは演出か指標か。軽く押した瞬間の反応の使いどころ
セラピスト向け
重心動揺の計測と重なったパワーテストの反応、評価に使える条件
立位の患者さんを検者が指先で軽く押して、ぐらつき方を見る。いわゆるパワーテストは、使い方ひとつで薄ら寒い演出にも、使える評価指標にもなります。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで話題に挙がった、重心動揺の計測とパワーテストの反応が重なった経験をもとに、この検査の使いどころを考えます。
ここで扱うパワーテストは、立位の患者さんに前後や左右から軽い外力を加えて、姿勢の崩れ方や耐え方を見る確認です。治療家の間でも「あまり使えないのでは」という声が出るくらい、評価としての立ち位置があいまいな検査でもあります。
検討の場でこの話題が挙がったのは、瀬谷崎が「最近はちょこちょこ使っている」と話したのがきっかけでした。使うようになった背景には、インソール(オーソティックス=足底挿板)を作る場面で出会った計測機器があります。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎重心動揺の計測結果と、押されたときの反応が重なった
瀬谷崎はもともとインソールには懐疑的でしたが、縁があってオーソティックスを試したところ、体感の変化に驚かされたといいます。その作成の場で使われていたのが、立位での前後方向の揺れ、左右への荷重の移動、体重のかかりやすい位置、さらに歩行の軌跡までリアルタイムで見られる計測機器でした。
この計測結果と、パワーテストの反応が一致することが多かった。これが検討の場で共有された臨床印象です。具体的には、次のような対応です。
- 前後方向に体重が大きくブレている人は、前後から軽く押すと姿勢が崩れやすい
- 同じ人がオーソティックスの上に乗ると、同じ押し方でも安定しやすい
- 左右方向のバラつきが少ない人は、横から押しても反応があまり変わらない
ブレの方向と、動作時痛の出る面が対応する印象
もうひとつ共有されたのが、腰痛の患者さんで見られた傾向です。例数はかなり少ないという断りつきで、動作時痛の出る面と、反応が変わる押しの方向に、次の対応が見られたといいます。
- 屈曲や伸展など矢状面(前後方向の面)の動きで痛みが出る人は、前後方向のパワーテストに変化が出やすく、左右方向には出にくい
- 回旋や側屈など水平面・前額面(ひねりや横に傾く面)の動きで痛みが出る人は、左右方向のパワーテストが大きく変わりやすい
この対応関係は、研究として検証された数字ではなく、計測機器を使った経験と少数例から語られた臨床印象です。そのまま判定基準にするのではなく、動診の所見と突き合わせる仮説のひとつとして扱うのが現実的です。
教子先生
まなぶ先生
瀬谷崎疼痛誘発動作がない症例の、数少ない指標として
普段は痛みや重さがあるのに、動かしても再現されない。あるいは経過が進んで、以前はあった誘発動作が消えてきた。こうした場面では、施術の前後で何を比べるかの選択肢がそもそも少なくなります。
そこにパワーテストを足しておくと、押されたときの揺れ方や耐え方という、動作時痛とは別の軸で変化を追えます。あくまで指標のひとつという位置づけですが、比べるものがない状態よりは推論を進めやすくなります。施術前後の確認を推論に組み込む考え方は、確認検査を飛ばした推論の記事でも扱っています。
押し方は「指先で軽く、瞬間の反応」がすべて
検討で強調されていたのは押し方です。体重をかけてぐいぐい押し込み、ぶら下がるように負荷をかけるやり方はしません。指先で軽くクイッと押した、その瞬間の反応を見ます。
揺れてしまう人は、指先で軽く押しただけでも姿勢が崩れます。逆に耐えられるときは、押された瞬間に「どう考えても耐えられる」という感覚が患者さん自身にもあります。強く押し込む必要は、そもそもありません。
押す強さを検者側で変えられてしまう検査だからこそ、外力を最小限にそろえておくことが、再現性をかろうじて保つ条件になります。
変化の確認には使える。見せる道具にすると検査が壊れる
検討では、誤用の典型も挙がりました。上から強く押して耐えられない状態を見せ、インソールの上に乗せてもう一度押して「耐えられるようになった」と示す。販売や効果アピールの場面で見かける、一発勝負の演出としての使い方です。
施術前後の変化確認として淡々と使う分には、パワーテストは否定されるべきものではありません。ただ、効果を見せるための道具に転用した瞬間、押し方で結果を作れる検査である以上、再現性のない意味のない確認に変わります。技術チェックの記事で扱ったのと同じで、検査は「何を確かめたいか」が先、道具が後です。
瀬谷崎




