「痛みは気のせい」と片付けてはいけない理由
瀬谷崎コラム
説明できない痛みを、雑に扱わない
検査で異常が見つからない痛みは、たしかにあります。でも、それをすぐに「気のせい」「心因性」と言ってしまうと、患者さんの痛みも、評価する側の責任も、かなり雑に扱うことになります。
原因が分かりにくい痛みは、存在します。だからこそ、分からないものを「気のせい」に押し込めず、身体・心理・社会背景を分けて丁寧に見たいところです。
「痛みは気のせいです」
この言葉、言われた側はかなりきついと思います。
言っている側は、「メンタルの影響もありますよ」と軽く言っているつもりかもしれません。でも、受け取る側には「あなたの痛みは本物ではない」と聞こえることがあります。
もちろん、痛みに心理的な要因が関わることはあります。ストレス、不安、睡眠、生活環境、人間関係。こういうものが痛みに影響することは、今では珍しい話ではありません。
ただ、そこから一気に「だから気のせいです」と行くのは、かなり危険です。

まなぶ先生

瀬谷崎
「気のせい」は、痛みを偽物扱いしやすい
痛みを「気のせい」と言われると、患者さんは自分の感覚を疑い始めます。
本当に痛いのに、「自分が弱いだけなのか」「大げさに言っていると思われているのか」と感じてしまう。
これは、かなりしんどいです。
しかも、その言葉は周囲にも影響します。家族や職場から「気持ちの問題なんでしょ」「痛みを言い訳にしているんじゃないの」と見られてしまうことがあります。
痛みを「気のせい」と片付けることは、痛みそのものだけでなく、その人の生活まで軽く扱ってしまうことがあります。
痛みが見えにくいものだからこそ、言葉の扱いは慎重でありたいです。
痛みには、いくつかの見方がある
痛みは、ひとつの箱に全部入れられるものではありません。
ざっくり分けると、次のような見方があります。
| 侵害受容性疼痛 | 組織への刺激や損傷などが関係する痛み。打撲、捻挫、炎症などでイメージしやすい痛みです。 |
|---|---|
| 神経障害性疼痛 | 神経そのものの損傷や障害が関係する痛み。しびれ、焼けるような痛み、電気が走るような痛みなどが関わることがあります。 |
| 痛覚変調性疼痛 | 明確な組織損傷や神経障害だけでは説明しきれない痛み。痛みの感じ方や処理の変化が関わると考えられます。 |
組織への刺激や損傷などが関係する痛み。打撲、捻挫、炎症などでイメージしやすい痛みです。
神経そのものの損傷や障害が関係する痛み。しびれ、焼けるような痛み、電気が走るような痛みなどが関わることがあります。
明確な組織損傷や神経障害だけでは説明しきれない痛み。痛みの感じ方や処理の変化が関わると考えられます。
大事なのは、3つ目を「気のせい」と言い換えないことです。
痛覚変調性疼痛は、「患者さんが嘘をついている」とか「弱いから痛い」とか、そういう話ではありません。
組織損傷や神経障害だけでは説明しきれない痛みを、もう少し丁寧に捉えるための考え方です。

まなぶ先生

瀬谷崎
「分からない」を、患者さんのせいにしない
ここは少し辛口に言います。
施術者や医療者側が分からない痛みを、患者さん側の心の問題にしてしまうことがあります。
もちろん、全員がそうだと言いたいわけではありません。真剣に悩んで、いろいろ評価したうえで、心理・社会的な要因も見ていくことは大切です。
でも、「自分が評価できない」「自分の知識では説明できない」ことを、「患者さんの気持ちの問題」にしてしまうのは違います。
「心因性」という言葉は、使い方を間違えると、評価する側の知識不足や技術不足を隠す便利な言葉になってしまいます。
分からない時に必要なのは、決めつけではありません。
もう一度、情報を整理すること。必要なら医療機関での確認をすすめること。身体的な要因、心理的な要因、生活背景を分けて見ることです。
BPSモデルは、心理だけを見るためのものではない
痛みを考える時に、BPSモデルという考え方があります。
生物学的、心理的、社会的な要因を合わせて見よう、という考え方です。
これはとても大事です。
ただ、このモデルを「やっぱり心理面が原因なんだ」と読むのは、かなり雑です。
| 生物学的な要因 | 組織の状態、神経の状態、炎症、可動域、筋力、睡眠、体力など。 |
|---|---|
| 心理的な要因 | 不安、恐怖、抑うつ、痛みに対する考え方、過去の経験など。 |
| 社会的な要因 | 仕事、家庭、周囲の理解、経済面、人間関係、休める環境があるかなど。 |
組織の状態、神経の状態、炎症、可動域、筋力、睡眠、体力など。
不安、恐怖、抑うつ、痛みに対する考え方、過去の経験など。
仕事、家庭、周囲の理解、経済面、人間関係、休める環境があるかなど。
BPSモデルは、心理面に原因を押しつけるためのものではありません。
むしろ、痛みを単純化しすぎないための考え方です。

まなぶ先生

瀬谷崎
伝え方ひとつで、患者さんの受け取り方は変わる
原因がはっきりしない痛みを説明する時、言葉の選び方はかなり大切です。
「気のせいです」ではなく、たとえばこう言えます。
画像や検査だけでは説明しきれない痛みもあります。だからといって、痛みが嘘という意味ではありません。身体の状態、痛みへの過敏さ、生活環境や不安などが重なっている可能性があるので、ひとつずつ整理していきましょう。
この言い方なら、患者さんの痛みを否定していません。
分からない部分を残しつつ、これから一緒に整理していく方向を示しています。
説明は、治療そのものではありません。でも、説明の仕方ひとつで、患者さんが安心できるか、不安を増やすかは大きく変わります。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、痛みを「気のせい」として片付けることはしません。
もちろん、心理的な要因や生活背景を無視するわけでもありません。
大切なのは、身体の状態、痛みの出方、生活への影響、不安やストレスの関わりを、ひとつずつ分けて見ることです。
痛みを否定しない。決めつけない。分からないものを患者さんのせいにしない。評価と説明を重ねながら、今できることを一緒に探します。
こんな方は一度ご相談ください
- 検査では異常がないと言われたが、痛みが続いている
- 「気持ちの問題」と言われて、納得できないまま不安が残っている
- 慢性的な痛みで、何をすればいいか分からない
- 痛みへの不安が強く、動くことが怖くなっている
- 身体の状態と生活背景を含めて、整理して説明してほしい
急な強い痛み、しびれや脱力、発熱、外傷、排尿・排便の異常、安静にしていても強い痛みが続く場合などは、まず医療機関での確認が必要になることがあります。
参考
- International Association for the Study of Pain (IASP)
The concept of nociplastic pain-where to from here?
痛みが長引いていて、自分の状態をどう考えればいいか迷う方は、店舗ページからご相談ください。
痛みを、ひとつの言葉で切り捨てない
痛みには、身体の要因も、心理的な要因も、社会的な要因も関わることがあります。
だからこそ、「全部気のせい」と切り捨てるのは危険です。
原因が分かりにくい痛みほど、雑な一言で終わらせず、丁寧に整理していく必要があります。

瀬谷崎













