接骨院・整体院の経営が危ないときに見えやすいサインと、職場選びで見たい数字
セラピスト向け
勢いがある院ほど、危ないサインも見ておきたい
店舗が増えている、求人の条件が良い、SNSで派手に見える。それだけで安心できるとは限りません。伸びている会社と、無理をしている会社は、外から見ると少し似ています。
職場選びでは、見た目の勢いだけで判断しない方がいいです。高額回数券、広告依存、急な出店、経営者の派手さ、不自然に高い初任給、従業員規模。こうしたサインを合わせて見る必要があります。
接骨院、鍼灸院、整体院、リラクゼーション店など、身体を扱う業界は競争がかなり激しくなっています。
一見すると、店舗が増えていて順調そうに見える会社があります。求人も出ている。初任給も高い。SNSも派手。なんとなく「ここは伸びている会社なんだろう」と感じる。
でも、外から見た勢いと、内側の安定性は別です。
少し辛口に言うと、潰れる直前の会社も、伸びている会社のように見えることがあります。

まなぶ先生

瀬谷崎
療術業の倒産は、珍しい話ではなくなっている
東京商工リサーチの公開データでは、2025年上半期の「マッサージ業」を含む療術業の倒産は55件とされ、上半期として過去20年で最多を更新しています。
そのうち売上不振が原因とされたものが8割超。さらに、従業員10人未満の小規模事業者が大半を占めています。
もちろん、ひとつのデータだけで全体を断定する必要はありません。地域や業態、経営者の力量によって差はあります。
ただ、「接骨院や整体院は潰れにくい」「手に職があるから大丈夫」と雑に考えるには、少し厳しい環境になっているのは確かです。
倒産件数だけで職場の良し悪しは決まりません。ただ、競争が激しく、コストも上がり、小規模院ほど体力が弱いという前提は、職場選びでも見ておいた方がいいです。
高額回数券は、現金が入るほど危うくなることもある
回数券やプリペイドは、使い方によっては悪いものではありません。
患者さんにとって通院計画が立てやすくなることもありますし、院側にとっても継続的な施術計画を作りやすくなる面があります。
ただし、数十万円単位の高額回数券を強く販売し、その入金を広告費や採用費にどんどん使っている場合は注意が必要です。
回数券の入金は、未来に提供する施術を先に受け取っているお金です。全部を自由に使える売上のように扱うと、後で苦しくなります。
前受金が大きく入ると、口座残高は一時的に増えます。
でも、その後には施術提供の義務が残ります。広告費に使い切ってしまえば、新規集客を続けないと回らなくなる。すると、さらに広告費が必要になり、また高額回数券を売らないといけなくなる。
この流れに入ると、外からは勢いがあるように見えても、内側ではかなりきつくなります。
外から見える危ないサイン
倒産リスクを外から完全に見抜くことはできません。
ただ、いくつかのサインを組み合わせることで、少なくとも「少し慎重に見た方がいい会社」は分かります。
| 見えるサイン | 良く見える理由 | 裏にあるかもしれないリスク |
|---|---|---|
| 急速な店舗展開 | 成長しているように見える | 借入や見せかけの実績作りで走っている可能性 |
| 高額回数券の強い販売 | 売上が大きく見える | 前受金依存、広告費依存、返金リスク |
| 不自然に高い初任給 | 待遇が良く見える | 人手不足や離職率の高さを隠している可能性 |
| 経営者の派手な発信 | 成功しているように見える | 会社のお金の使い方や価値観に不安が残る |
| 差別化が弱い | 一見どこにでもある院に見える | 広告費と値引き競争に巻き込まれやすい |
ひとつ当てはまっただけで危ない、と決めつける必要はありません。
ただ、複数重なっているなら、入社や転職の前にかなり冷静に見た方がいいです。
経営者のお金の使い方は、会社の空気に出る
経営者が何にお金を使っているかは、会社の価値観に出ます。
もちろん、経営者が良い車に乗っているだけで悪い会社とは言えません。そこを単純に決めつける必要はありません。
ただ、会社が厳しいのに、現場への投資やスタッフへの還元より、外向きの派手さばかりが目立つなら注意した方がいいです。
教育、採用、給与、患者さんへのサービス、広告、内装、経営者個人の発信。お金と時間がどこに向いているかを見ると、その会社が何を大事にしているかが見えやすくなります。
職場選びでは、条件だけでなく、経営者の価値観も見た方がいいです。
派手さに惹かれるより、現場が安定しているか、教育があるか、無理な販売に寄っていないか。その方が、働く側にとってはずっと大事です。

まなぶ先生

瀬谷崎
小規模院が悪いわけではない。ただ体力差はある
従業員10人未満の院がすべて危ない、という話ではありません。
小規模でも、地域に根づいて安定している院はあります。固定費を抑え、無理な広告をせず、紹介やリピートで堅実に続いている院もあります。
ただ、職場選びとして見るなら、規模の小ささはリスクのひとつです。
院長ひとりの集客力や施術力に依存している。スタッフが少なく、ひとり辞めるだけで現場が回らない。教育体制が属人的。資金繰りの余力が薄い。こういう弱さが出やすくなります。
大きければ必ず安全、小さければ必ず危険、ではありません。ただ、倒産データでは小規模事業者が多くを占めており、働く側はその体力差を無視しない方がいいです。
入社前に確認したいこと
就職や転職で迷う時は、表面的な条件だけでなく、ビジネスモデルを少し見た方がいいです。
- 高額回数券や前払いに依存していないか
- 口コミに「強く売られた」という不満が多くないか
- 急な出店が続いている場合、その理由を説明できるか
- 初任給の高さに見合う教育や生産性があるか
- 他院との違いが広告文句だけになっていないか
- 従業員数、離職率、教育体制を確認できるか
- 院長や経営者の発信が現場の価値観と合っているか
面接で聞きにくいこともあります。
それでも、働く側にとっては生活がかかっています。聞ける範囲で聞く。口コミを見る。現場見学をする。条件の良さだけで即決しない。これだけでもリスクは下げられます。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、患者さんへの施術だけでなく、働くスタッフが安心して臨床に向き合える環境づくりも大切にしています。
無理な販売や、広告費に追われる経営は、最終的に現場へ返ってきます。スタッフは数字に追われ、患者さんへの説明も強くなりやすい。これは、院にも患者さんにも良い状態ではありません。
だからこそ、派手な成長より、続けられる仕組み。強い売り込みより、納得できる説明。表面的な条件より、現場が安定しているかを見たいと思っています。
「勢いがあります」と「無理して走っています」は、外から見ると似ています。だから、求人を見る側も少しだけ数字と仕組みを見る目を持った方がいいです。
職場選びは、条件よりも仕組みを見る
高い初任給、きれいな内装、急な店舗展開、派手な発信。
どれも、それだけで悪いわけではありません。けれど、それだけで安全とも言えません。
大事なのは、その裏側にある仕組みです。売上は何で作っているのか。回数券に依存していないか。広告費に追われていないか。スタッフが長く働ける設計になっているか。患者さんへの説明が無理なくできているか。
職場選びは、自分の生活とキャリアを預ける判断です。条件の良さに惹かれる前に、その会社が倒れにくい形で運営されているかを見ておきたいところです。

瀬谷崎













