治療院経営で見たい7つの数字。感覚運営から抜け出すためのチェックポイント

院経営は、感覚より数字で見た方がいい

忙しいのに利益が残らない。新規は来ているのに患者数が増えない。その違和感は、根性論ではなく数字を分解すると見えてくることがあります。

売上だけを見ていると、院の本当の状態は分かりません。客数、離反、LTV(ライフタイム・バリュー)、CPA(コストパー・アクション)、リピート率、顧客単価、稼働率、経費比率を合わせて見る必要があります。

治療院の経営で怖いのは、「なんとなく忙しいから大丈夫」と思ってしまうことです。

予約は入っている。スタッフも動いている。新規もゼロではない。だから問題ない気がする。

でも、月末に通帳を見るとあまり残っていない。患者数も思ったほど増えていない。広告費を増やしているのに、なぜか苦しい。

こういう時に必要なのは、気合いでも、流行りのメニューでも、謎の根性ミーティングでもありません。

少し辛口に言うと、数字を見ずに経営しているなら、目隠しで施術しているのとあまり変わりません。

まなぶ先生
まなぶ先生

売上が伸びない時って、まず新規を増やそうと考えがちです。

瀬谷崎
瀬谷崎

新規も大事です。ただ、穴が空いたバケツに水を入れているだけなら、先に穴を見た方がいいです。治療院でいうと離反ですね。

売上は、まず分解して考える

売上は大きく見ると、客数、頻度、単価で作られます。

式にするとシンプルです。

売上 = 客数 × 来院頻度 × 単価

ここで大事なのは、どこを上げるのが現実的かを考えることです。

単価を上げるのはできます。ただし、院のコンセプト、説明力、患者さんの納得感がないまま上げると、ただの値上げになります。

頻度を上げるのもできます。ただし、必要性がないのに来院頻度だけを上げようとすると、患者さんの信頼を失います。

客数は、上限が比較的大きい指標です。とはいえ、客数だけを追えばいいわけでもありません。入ってくる人数と、離れていく人数を一緒に見ないと意味がありません。

新規より先に、離反を見た方がいいことがある

治療院の患者数は、ざっくり言うと次のように動きます。

患者数 = 新規 + 再診 + 既存 - 離反

この式を見ると、問題が少し見えやすくなります。

新規が毎月それなりに来ていても、離反がそれ以上に多ければ、患者数は増えません。むしろ減ります。

広告費をかけて新規を増やしても、初回や数回で離れていくなら、ずっと集客し続けないと回らない院になります。

新規集客は目立ちます。離反は静かに起きます。だからこそ、経営者は離反の方を意識して見ないといけません。

新規獲得は、既存患者さんに続けて通ってもらうことよりコストがかかりやすいと言われます。

だから、売上が落ちた時に「広告を増やそう」だけで反応するのは危ないです。広告が悪いのではなく、離反の穴をふさがないまま広告を増やすと、経費だけが膨らみます。

院の状態を見る7つの数字

経営を見る時は、売上総額だけでは足りません。

少なくとも、次の数字は見ておきたいところです。

指標 見ること よくある落とし穴
客数 院に来ている患者さんの総量 新規だけ見て、離反を見ない
離反率 どれだけ患者さんが離れているか 静かに減っているので気づきにくい
LTV(ライフタイム・バリュー) 1人の患者さんが一定期間で生む価値 初回売上だけで判断する
CPA(コストパー・アクション) 1人の新規を獲得するための広告費 新規数だけ見て採算を見ない
リピート率 2回目、6回目など継続の流れ 2回目だけ高くて、その後に落ちる
月あたり顧客単価 頻度と単価を合わせた月の価値 必要な提案ができず低くなる
稼働率・経費比率 予約枠とお金の余白 稼働率100%前提で計画する

数字は、経営者を責めるために見るものではありません。

どこが詰まっているのかを見つけるために見ます。臨床で評価をするのと同じです。

LTVとCPAが合っていないと、集客するほど苦しくなる

CPAは、1人の新規患者さんを獲得するためにかかった費用です。

LTVは、1人の患者さんが一定期間で院にもたらす価値です。

このバランスが悪いと、新規が増えても利益が残りません。

ざっくり見たい基準

LTVは、CPAの最低でも3倍くらいは欲しいところです。CPAが1万円なら、LTVが3万円を下回る状態では、広告を増やすほど苦しくなりやすいです。

もちろん、業態や地域、メニュー構成によって目安は変わります。

ただ、「新規が増えたから成功」ではありません。いくらで獲得して、その患者さんがどれくらい継続し、どれくらい価値を生んだのか。ここまで見ないと判断できません。

まなぶ先生
まなぶ先生

新規数が増えているのに苦しい院は、CPAとLTVが合っていない可能性があるんですね。

瀬谷崎
瀬谷崎

あります。入口だけ増やしても、続かない、単価が低い、説明が弱いなら、広告費で疲弊します。

2回目だけでなく、6回目を見る

リピート率を見る時、2回目だけを見て安心してしまうことがあります。

2回目は来ている。でも、3回目、4回目、6回目あたりで落ちる。こういう院は少なくありません。

初回で不安を煽って2回目につなげることは、やろうと思えばできます。

でも、患者さんが本当に納得して通院しているか、計画の意味を理解しているかは、もう少し先の数字に出ます。

見落としやすい数字

2回目リピート率だけでなく、6回目リピート率を見ます。2回目は高いのに6回目が低い場合、説明、計画、変化の実感、通院負担のどこかにズレがある可能性があります。

患者さんは、ただ回数を消化したいわけではありません。

今なぜ通うのか、どこに向かっているのか、変化が出ているのか。この説明が弱いと、途中で離れます。

月あたり顧客単価は、説明力も映す

月あたり顧客単価は、来院頻度と単価を合わせて見ます。

単価が高くても頻度が低ければ、月の売上は伸びません。頻度が高くても単価が低すぎれば、スタッフは忙しいのに利益が残りにくくなります。

ここで見たいのは、無理な提案をしていないか、逆に必要な提案まで遠慮していないかです。

お金をいただくことへの申し訳なさが強すぎると、必要な施術計画まで言えなくなります。それは優しさに見えて、患者さんにも院にも中途半端です。

もちろん、高額メニューを押し売りすればいいという話ではありません。

必要な頻度、必要な期間、なぜそれが必要なのかを説明できるか。患者さんが納得して選べる状態を作れているか。

月あたり顧客単価が低すぎる時は、単価表だけでなく、説明の質も見た方がいいです。

稼働率100%で計画すると、だいたい苦しくなる

稼働率は、予約枠のうちどれくらいが埋まっているかを見る数字です。

一見、100%に近いほど良さそうに見えます。予約がびっしり埋まっていると、繁盛している感じがします。

でも、常に100%で回す設計は危険です。

  • 新規患者さんを受け入れる枠がなくなる
  • 急な変更や遅れに対応できない
  • スタッフの休憩や記録の時間が削られる
  • 施術時間が伸びた時に後ろへ全部ずれる
  • 疲弊して接遇や説明の質が落ちる

売上計画の段階で、稼働率100%を前提にしてはいけません。

目標達成時でも70%前後に収まるように設計しておくと、かなり現実的になります。繁忙期や曜日差を考えても、常に満杯前提はスタッフも院ももちません。

最後は、経費比率を見る

売上があっても、経費が膨らめば利益は残りません。

治療院では、人件費、家賃、広告費の比率が特に大きく効いてきます。

項目 ひとつの目安 見たいこと
人件費 30〜40%程度 給与を払ったうえで利益が残る設計か
家賃 10%以下 見栄や立地に払いすぎていないか
広告費 10%以下 広告依存になりすぎていないか
営業利益率 10〜15%、できれば20% 続けられる余白があるか

この数字は、院のステージによって多少変わります。

開業初期、採用期、出店期では広告費や人件費が一時的に膨らむこともあります。

ただ、その理由を説明できないまま慢性的に高いなら、どこかで苦しくなります。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、臨床も経営も「なんとなく」で済ませないことを大切にしています。

患者さんの身体を見る時に、痛い場所だけで決めつけないのと同じです。院の状態も、売上だけで決めつけません。

どこから患者さんが来て、どこで離れ、どの説明で納得し、どの数字が崩れているのか。そこを見ないと、改善策はただの思いつきになります。

少し辛口に言うと

数字を見ない院長ほど、スタッフのやる気や患者さんの質のせいにしがちです。でも、まず見るべきは仕組みです。仕組みを見れば、現場を責めなくて済むことも多いです。

数字は、院を責めるためではなく守るためにある

KPIという言葉だけ聞くと、冷たい管理のように感じるかもしれません。

でも本来、数字は現場を縛るためではなく、現場を守るためにあります。

離反が増えているなら、説明や計画を見直す。LTVとCPAが合っていないなら、広告の前に継続の仕組みを直す。稼働率が高すぎるなら、スタッフが壊れる前に設計を変える。

数字を見ることは、患者さんにもスタッフにも無理をさせないための準備です。

瀬谷崎
瀬谷崎

経営の数字は、感覚を否定するためのものではありません。感覚で気づいた違和感を、ちゃんと直せる形にするための道具です。まずは、自分の院の数字を見えるところに出すことから始めましょう。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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