扁平足からPCFD(進行性扁平足変形)へ。足のアーチだけで見ないための新しい捉え方
セラピスト向け
足のアーチだけでなく、変形の進行として見る
「扁平足」という言葉は分かりやすい反面、病態を単純化しすぎることがあります。大切なのは、足のアーチが低いかどうかではなく、どこが、どの方向へ、どの程度崩れているのかを見ることです。
PCFDでは、足部の変形を「扁平」という一語ではなく、後足部・前足部・中足部・距骨周囲・足関節まで含めて分類します。
PCFDは、ただの言い換えではありません。「扁平足」という静的な見方から、進行性で多面的な足部変形として捉えるための概念です。
「扁平足」は、患者さんにも医療者にも馴染みのある言葉です。
土踏まずが低い。足のアーチが潰れている。足が内側へ倒れている。
こうした状態を説明するには、たしかに分かりやすい表現です。
ただ、分かりやすい言葉ほど、病態を雑にまとめてしまうことがあります。
足のアーチが低いこと自体が問題なのか。
後足部が外反しているのか。前足部が外転しているのか。中足部が崩れているのか。足関節まで巻き込んでいるのか。
ここを見ずに「扁平足ですね」で終わらせると、臨床の解像度がかなり落ちます。

まなぶ先生

瀬谷崎
なぜ「扁平足」では足りないのか
2020年、米国足の外科学会に関連するコンセンサスグループは、従来の扁平足という表現では病態を十分に表せないとして、Progressive Collapsing Foot Deformity(進行性扁平足変形)、つまりPCFDという名称を提唱しました。
ここで重要なのは、PCFDが単なる新しい専門用語ではないことです。
扁平足は、どうしても「足の裏が平ら」という形の印象が強くなります。
しかし、臨床で問題になる成人の後天的な足部変形は、内側縦アーチだけで完結しません。
後足部の外反、前足部の外転、内側列の不安定性、距骨周囲の亜脱臼、足関節の外反など、複数の要素が重なります。
「扁平足」は結果の見た目を表しやすい言葉です。PCFDは、その背景にある進行性の崩れ方まで見ようとする言葉です。
名称が変わる時は、単に流行りの言葉が変わるだけではありません。
そこには、何を見落としていたのか、どこをもっと正確に評価したいのか、という臨床側の反省があります。
「足のアーチが低い」だけで判断しない
足のアーチが低い人はたくさんいます。
しかし、アーチが低いことと、痛みや機能障害があることは同じではありません。
無症状の扁平足もありますし、子どもの柔らかい扁平足と、成人になってから進行する変形では意味が違います。
だからこそ、見た目だけで「治すべき異常」と決めつけるのは危険です。
扁平足という見方
焦点:土踏まずが低いかどうか。
説明しやすい一方で、病態がアーチだけに見えやすい。
PCFDという見方
焦点:足部全体がどのように崩れているか。
後足部、前足部、中足部、距骨周囲、足関節まで含めて見る。
「アーチが低いから痛い」と説明すると、患者さんは自分の足を構造的に壊れたものとして捉えやすくなります。
本当に必要なのは、アーチの高さだけを問題にすることではなく、その人の症状、機能、変形の進行、生活上の困りごとを合わせて判断することです。
PCFDでは何を見るのか
PCFDの分類では、変形をいくつかのクラスに分けて捉えます。
ざっくり言えば、どの部位が、どの方向へ崩れているのかを見るための分類です。
後足部
踵が外反しているか。立位で踵がどの方向へ倒れているか。
前足部・中足部
前足部が外転しているか。内側列が不安定になっていないか。
距骨周囲
距骨周囲の亜脱臼や、足部全体の位置関係の崩れがないか。
足関節
足関節外側の不安定性や外反が加わっていないか。
このように見ると、PCFDは「扁平足を難しく言っただけ」ではないことが分かります。
アーチの低下という一点ではなく、足部・足関節全体の崩れを立体的に見ようとする概念です。
患者さんに「扁平足です」と伝えるだけでは、どの部位に問題があるのか、進行性なのか、どの介入が必要なのかが曖昧になります。臨床家側はPCFDの視点で分解して考える必要があります。
現場で確認したい所見
PCFDを疑う時は、足の形だけでなく、症状と機能を合わせて見ます。
内側の足部痛、後脛骨筋腱周囲の痛み、長く歩くと疲れる、片脚で踵を上げにくい、靴の減り方が変わった、足が外へ開いて見える。
こうした情報は、単なる「扁平足」よりも、どのような崩れ方をしているのかを考える手がかりになります。
- 立位で内側縦アーチがどの程度低下しているか
- 後足部外反があるか
- 前足部外転や、いわゆるtoo many toes signがあるか
- 片脚ヒールレイズが可能か、痛みや不安定感があるか
- 内側列の不安定性や足関節の巻き込みが疑われるか
- 変形が柔らかく戻るのか、硬く戻りにくいのか
もちろん、これらだけで確定できるわけではありません。
症状が強い、進行が疑われる、変形が硬い、足関節まで巻き込んでいる、保存的な対応で改善しない。
こうした場合は、画像評価や専門医への相談も含めて考える必要があります。
患者さんにはどう伝えるか
患者さんにいきなり「PCFDです」と言っても、伝わりにくい場面は多いと思います。
だから、説明の入口として「扁平足傾向があります」と伝えること自体は悪くありません。
ただし、その後に何を補足するかが大切です。

まなぶ先生

瀬谷崎
たとえば、次のように伝えると、患者さんの不安を煽りにくくなります。
土踏まずが低いこと自体が、必ず悪いわけではありません。ただ、今は踵や足の内側の支え方も含めて、足全体の使い方が崩れている可能性があります。痛みや歩きにくさと関係しているかを、動きや負荷を見ながら確認していきましょう。
この説明なら、足の形だけを悪者にせず、機能と症状を一緒に見ていく姿勢が伝わります。
名称のズレは、介入のズレにつながる
疾患名や状態名は、ただのラベルではありません。
名前が変わると、臨床家の見方も変わります。
「扁平足」と呼ぶと、アーチを上げることや足底板だけに意識が向きやすくなります。
一方でPCFDとして見ると、後足部、前足部、中足部、距骨周囲、足関節、進行性、柔軟性などを含めて考えやすくなります。
言葉のズレは、評価のズレになり、評価のズレは介入のズレになります。
だからこそ、馴染みのある言葉ほど、いったん疑ってみる価値があります。
「扁平足だから足底アーチを作る」ではなく、「この人の足部変形はどの要素で構成され、どこが症状や機能低下に関わっていそうか」と考えることが重要です。
アーチではなく、崩れ方を見る
扁平足という言葉は、今後も臨床や日常会話で使われ続けると思います。
患者さんに説明する時にも、分かりやすい入口として役立つ場面はあります。
ただ、臨床家の頭の中まで「アーチが低い」で止まってはいけません。
大切なのは、足のどこが、どの方向へ、どの程度崩れているのか。
それが痛みや歩行、片脚支持、靴の減り方、活動量にどう関係しているのか。
そして、保存的に見てよい状態なのか、専門的な評価へつなぐべき状態なのか。
PCFDという名称は、こうした視点を持つための道具です。
言葉をアップデートすることは、臨床の見方をアップデートすることでもあります。

瀬谷崎
足の痛みや歩きにくさは、足の形だけでなく、荷重のかかり方や全身の動きも含めて整理することが大切です。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。













