Cotton-Loder(コットン・ローダー)肢位とは何か。橈骨遠位端骨折の固定肢位、揺れる定義を並べて確かめる
セラピスト向け
文献ごとに揺れる定義を、並べて確かめる。Cotton-Loder肢位という言葉
Cotton-Loder(コットン・ローダー)肢位は、橈骨遠位端骨折の固定で語られる古典的な肢位です。ただ、その定義は資料によって少しずつ違います。各文献の定義を並べ、軽度の掌屈固定とは何が違うのかを見ていきます。
橈骨遠位端骨折の固定を語るとき、Cotton-Loder肢位という言葉を耳にすることがあります。手関節を強く掌屈・尺屈させて整復位を保つ、古くから知られる肢位です。
ただ、いざ「Cotton-Loder肢位とは具体的にどの角度か」を調べると、資料ごとに表現が揺れています。今回は、瀬谷崎が集めた各文献の定義を並べ、この言葉をどう扱うかを考えます。
Cotton-Loder肢位とは:橈骨遠位端骨折の古典的な固定肢位
Cotton-Loder肢位は、橈骨遠位端骨折(コーレス骨折など)を整復したあと、骨片の転位を防ぐために手関節を強く掌屈・尺屈させて固定する肢位として知られています。手のひら側に深く曲げ、小指側へ倒し、前腕を回内させる。この強い肢位で整復位を保とうとする考え方です。
ただし、強い掌屈位は手根管の中の圧を高め、正中神経への負担が大きくなります。正中神経麻痺や手根管症候群のリスクから、現在は軽度の掌屈から中間位での固定が主流で、Cotton-Loder肢位はそのまま推奨されるものではありません。だからこそ、この言葉が何を指すのかを正確に共有しておく意味があります。
文献ごとに定義を並べてみる
Cotton-Loder肢位について、学会などが独立した用語定義として公式に示した資料は確認できていません。そのうえで、主な文献の記述を並べると、次のようになります。
| 出典 | Cotton-Loder肢位の記述 |
|---|---|
| 橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017 | 手関節の最大掌屈・尺屈位、前腕回内位 |
| Davis & Baratz(2010) | 過度の手関節掌屈+尺屈 |
| Kobayashi et al.(2026) | 手関節の最大掌屈+最大尺屈+前腕最大回内 |
| Kaempf et al.(2026) | 強制掌屈+最大尺屈+回内 |
表現の幅はありますが、共通しているのは、手関節の強い掌屈と尺屈、そして多くが前腕回内を含む、という点です。古典的なCotton-Loder肢位は、少なくとも手関節の強い掌屈・尺屈、あるいは最大掌屈・最大尺屈・前腕回内を含む肢位として扱われている、とまとめられます。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎
軽度掌屈の固定を、同じ言葉で呼べるか
ここで問題になるのが、では軽度の掌屈で固定した場合に、それをCotton-Loder肢位と呼べるのか、という点です。
Alemdaroğluら(2010)は、橈骨遠位端骨折に関する報告で、手関節を掌屈10〜15度の軽度掌屈、範囲としては0〜30度(推奨は15〜20度)で固定するとしています。そのうえで、この肢位はCotton-Loder positionと混同すべきではなく、Cotton-Loderはfull or excessive flexion、つまり完全な、あるいは過度の掌屈を示すものだと、明確に区別しています。
参考として、手関節掌屈の一般的な関節可動域の値は、国内の関節可動域基準で90度、AAOS(米国整形外科学会)の基準で80度とされています。この値をそのままCotton-Loder肢位の最大掌屈位と断定することはできませんが、可動域が80〜90度あるなかで、20〜30度程度の掌屈固定を「Cotton-Loder肢位」と呼ぶのは、やはり無理があると言えます。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎
言葉をそろえて使う
Cotton-Loder肢位は、細かな角度の定義は文献で揺れますが、強い掌屈・尺屈を含む肢位という芯は共通しています。そして、軽度掌屈の固定とは、はっきり区別して使うべき言葉です。
臨床で大切なのは、名前だけで伝えようとせず、実際の肢位を角度でも共有することです。強い掌屈で固定したのか、軽度掌屈なのか。その違いが、正中神経の症状への警戒や、次に診る人の判断につながります。用語の精度は、そのまま臨床の共有言語の精度になります。
参考文献
- 日本整形外科学会・日本手外科学会 監修. 橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017.
- Davis DI, Baratz M. Soft tissue complications of distal radius fractures. Hand Clin. 2010.
- Kobayashi et al.(2026)/Kaempf et al.(2026):Cotton-Loder肢位の定義に関する記述より。
- Alemdaroğlu KB, et al. Immobilisation in supination versus neutral position after closed reduction of distal radius fractures.(2010)における固定肢位の記述より。
名前と実態をそろえておく
Cotton-Loder肢位は、橈骨遠位端骨折の固定で語り継がれてきた言葉です。定義の細部は文献で揺れますが、強い掌屈・尺屈を指す点は共通し、軽度掌屈の固定とは区別して扱うのが妥当です。
言葉を正確にそろえておくことは、正中神経のリスクに気づく目線にも、次に診る人との円滑な引き継ぎにもつながります。名前と実態を一致させて使っていきたいところです。
瀬谷崎





