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上を向くと首が張る肩こりと、下を向くと肩が張る肩こり。同じデスクワークの2症例をスタッフで検討

同じ肩甲骨の崩れなのに、なぜ張る動きが違ったのか

2つの症例を、担当した塩谷健太先生(とんとん整骨院 ときわ台店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。どちらもデスクワークで座り続けると肩こりがつらくなる方。肩甲骨が外側へ開いて下がり、支える僧帽筋の働きが弱まっているという所見も、手技とトレーニングとセルフケアという進め方も同じでした。違ったのは、動きの検査で張りが出た方向です。一人は首を前に倒すと肩が張り、もう一人は上を向くと首が張る。この違いを何と読み、進め方のどこを変えたのかを、所見という事実と、経過という結果から確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は少し形を変えて、同じ担当者が3年の間をあけて担当した、よく似た2つの症例を並べます。2021年にご来院の70代の女性と、2024年にご来院の60代の女性。どちらもデスクワークで、座り続けると肩こりがつらくなる方でした。似ているからこそ、どこが違い、その違いが進め方にどう響いたのかが見えやすい題材です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:上を向くと首が張るデスクワークの肩こり、張る方向の違いに着目
今回検討する症例(担当:塩谷先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

症例1(2024年)=60代女性・デスクワーク。座り続けると肩こりがつらい。動きの検査では、首を後ろへ反らす動きと横へ倒す動きで首の張り感が強い。症例2(2021年)=70代女性・デスクワーク(フルタイム)。座り続けると肩こりがつらい。動きの検査では、首を前に倒す動きと横へ倒す動きで肩の張り感が強い。共通の所見=肩甲骨が外側へ開いて下がった位置にあり、肩甲骨を支える僧帽筋の働きが弱い。共通の対応=小胸筋・上腕二頭筋・板状筋への手技、僧帽筋のトレーニング、胸筋のセルフストレッチ。経過=どちらも初回で張り感が引き、2回目のご来院時には仕事のなかで戻っていた。症例1は戻りが大きかったため2回目の時点でストレッチとセルフトレーニングを指導。どちらも3〜5回目で戻り幅が小さくなり、8回目ごろに日常でほとんど気にならない程度となって月1回のメンテナンスへ移行。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

デスクワークの肩こり、なぜ「どの動きで張るか」を分けてとらえるのか

所見も進め方も同じ2つの症例。塩谷先生は、動きの検査で張りが出た方向の違いを、ゆるめる場所の優先順位と、セルフケアで伸ばす向きの違いとして読みました。その根拠を確かめます。

塩谷先生塩谷先生

お二人とも、肩甲骨が外側へ開いて下がり、支える僧帽筋が働きにくくなっている、という所見は同じでした。座って腕を前に出す姿勢が続くと、胸の前や腕の前側の筋肉が縮んで肩甲骨を前下方へ引きます。ここまでは共通です。違ったのは動きの検査で、2021年の方は首を前に倒すと肩が張り、2024年の方は上を向くと首が張りました。前に倒して張るのは、肩甲骨から首へ伸びる筋肉が引き伸ばされる側の張り。上を向いて張るのは、首の後ろの筋肉が縮んだ位置のまま頭を支え続けている側の張りだと考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

所見が同じで手技も同じなら、張る方向の違いは細かい話に思えます。それでも分けてとらえたのは、進め方のどこかが実際に変わるからですか。

塩谷先生塩谷先生

変わるのは順番と向きです。前に倒して張る方は、引き伸ばされている肩の筋肉を先にゆるめて肩甲骨を戻すことを優先しました。上を向いて張る方は、縮んだ位置で働き続けている首の後ろの筋肉をゆるめる工程を足して、そのうえで胸の前を伸ばしました。セルフケアでも、前者は胸を開くストレッチが中心、後者はそれに加えて、上を向く動きを反動をつけずに張りの手前でとどめる、という注意を添えています。同じ肩こりでも、ご本人が困っている動きに合わせて渡すものを変える、という程度の違いですが、その違いで戻り方が変わると感じています。

上を向くと首が張るとき、先に外しておくべきサインは何か

首を反らして出る症状には、首の骨や神経が関わる場合もあると言われています。教子先生が、施術に進む前の確認を尋ねました。

教子先生教子先生

上を向くと首が張る、という訴えは、首の骨や神経が背景にある場合と分けて考えたいところですよね。腕や手のしびれ、力の入りにくさ、めまいや強い頭痛。このあたりの確認はどうでしたか。

塩谷先生塩谷先生

最初にうかがっています。2024年の方は、腕や手へのしびれや力の入りにくさはなく、めまいや頭痛の訴えもありませんでした。張りは座り続けたあとに強まり、動きに伴って変わる出方で、首を動かしていないときに強まり続けることもありませんでした。こうしたサインがあれば、先に医療機関の受診をご案内しています。今回はそれらがないことを確かめたうえで、筋肉と肩甲骨の側から進めました。

瀬谷崎瀬谷崎

順番が大事なところですね。上を向いて張る、というだけでは筋肉の問題とも骨や神経の問題とも決められない。しびれや力の入りにくさ、動きと関係なく続く痛みを外して初めて、縮んだ位置で働き続けている筋肉、という仮説に絞れます。年代が上がるほど、この確認を先に置く意味は大きいと思います。

初回で楽になっても仕事で戻る、セルフケアをいつ渡すのか

どちらの症例も、初回で張り感が引いたあと、2回目には仕事のなかで戻っていました。戻り幅の違いを、セルフケアを渡す時期の判断にどうつなげたのかを確かめます。

まなぶ先生まなぶ先生

初回で楽になって、次に来たら戻っている。これは座り続ける仕事の方ではよくある流れですよね。2024年の方は戻りが大きかったそうですが、そこで何を変えましたか。

塩谷先生塩谷先生

2021年の方も戻ってはいましたが、2024年の方はそれより大きく、初回前に近いところまで戻っていました。座る環境そのものは変えられないので、施術の回数を重ねるより先に、ご自身でできることを持ち帰っていただく方が早いと考えて、2回目の時点で胸のストレッチと僧帽筋のトレーニングをお伝えしました。そこから3〜5回目にかけて、仕事中に戻ってくる程度が小さくなり、8回目ごろには日常でほとんど気にならない程度になって、月1回のメンテナンスに移っています。2021年の方も、回数の流れとしてはほぼ同じでした。

教子先生教子先生

戻り幅を、セルフケアを渡す時期の目安にしているんですね。戻ること自体を失敗と受け取ってしまう方も多いので、戻りは自然な反応で、その幅を小さくしていくのが目標だと最初に共有しておくのは大切だと思います。

瀬谷崎瀬谷崎

2つ並べると、進め方の骨格は同じで、違ったのは張る方向と、セルフケアを渡した時期だけ、という見え方になります。それでも経過はどちらも8回ほどで月1回に移っている。要因に合わせて渡すものを少し変える、という調整が、似た症例のなかで再現されたと言えそうです。年代を理由に支える力をあきらめる必要はない、という点も、お二人の経過が示していると思います。

考察:張る方向で分けてとらえる、デスクワークの肩こりの見方

所見という事実(どちらも肩甲骨が外側へ開いて下がり、僧帽筋の働きが弱い。違いは動きの検査で張りが出た方向)と、経過という結果(どちらも初回で張り感が引き、2回目には仕事のなかで戻り、3〜5回目で戻り幅が小さくなり、8回目ごろに月1回のメンテナンスへ移行)。この両方が、「同じ背景でも、張る方向に合わせてゆるめる順番と伸ばす向きを変える」という見立ての妥当性を支えています。似た症例が似た経過をたどったこと自体が、進め方の骨格が妥当だったことの裏づけになります。ただし、上を向いて出る症状には首の骨や神経が関わる場合もあるため、しびれや力の入りにくさ、動きと関係なく続く痛みの確認を、いつも先に置きます。そのうえで、戻り幅を目安にセルフケアを渡す時期を調整する。2つの症例からは、その進め方が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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