梨状筋症候群を疑うときの検査。フェアテストと優先順位の付け方
施術・検査ガイド
テストは網羅するより、選んで重ねる
梨状筋症候群を疑うときの検査は、感度や特異度がはっきりしないものが多く、全部行えば答えが出るわけではありません。優先順位をつけて選び、重ねていく考え方をお伝えします。
梨状筋症候群が疑われるときに使う検査には、股関節を伸張させて症状の変化を見るものと、収縮させる運動で症状の変化を見るものがあります。ここでは、それぞれの検査の位置づけと、実際の臨床でどの検査を優先しているか、腰椎由来の症状との見分け方、改善が停滞したときに視点をどう広げるかを書いています。
結論:まずラセーグテストで腰椎由来の可能性を確かめ、フェアテストを軸に反応を重ねます。1つの陽性で確定させるのではなく、複数の反応と経過で確からしさを上げ、停滞したら梨状筋以外の要因へ切り替えます。
お尻から太ももの裏、ふくらはぎにかけての痛みやしびれがあるとき、梨状筋症候群という名前を耳にすることがあります。
ただ、実際の検査は感度や特異度が確立していないものが多く、載っている検査を全部行えば答えが出る、というものではありません。どの検査を、どの順番で選ぶかという考え方を押さえておくことが実用的です。
梨状筋症候群は、深臀部症候群の中の一因子
以前は、臀部から下肢にかけての痛みやしびれを梨状筋症候群という一つの名前で説明することが多くありました。ただ、梨状筋だけを見ていると、内閉鎖筋や大腿方形筋、ハムストリングスの近位部など、坐骨神経に影響しうる他の部位を見落とすことがあります。
現在は、これらを一つの枠組みで捉え直した、深臀部症候群(DGS/Deep Gluteal Syndrome、ディープ・グルーティアル・シンドローム)という考え方が広がってきています。梨状筋症候群という呼び方をどう位置づけ直すか、DGSの全体像についてはこちらの記事で扱っています。
検査には伸張ストレス系と収縮ストレス系がある
梨状筋症候群を疑うときの検査は、大きく二つの系統に分かれます。
| 伸張ストレス系 | 股関節を屈曲・内転・内旋させて梨状筋を伸ばし、症状が誘発されるかを見る。フェアテスト(Fair test)がこれにあたり、日本でよく行われる検査とも動きが近い。 |
|---|---|
| 収縮ストレス系 | 股関節を外旋させる方向へ抵抗をかけ、筋の収縮によって症状が誘発されるかを見る。 |
片方だけでは反応が出にくくても、もう片方で症状の変化が見られることがあるため、伸張ストレスと収縮ストレスの両方を確認しておくという考え方が臨床の現場でも共有されています。
検査の優先順位。まず腰椎由来を確認し、フェアテストを軸にする
梨状筋に関する検査は数多く紹介されていますが、載っている検査を全部行う必要はありません。臨床では次の流れを優先しています。
- SLRテストで腰椎由来を確認するまずSLRテスト(下肢伸展挙上テスト)で陰性であることを確認し、腰椎由来の可能性をいったん脇に置けるかを見ます。SLRテストの手順や注意点はこちらの記事で解説しています。
- 伸張ストレス系はフェアテストを軸に使うそのうえで、伸張ストレス系の検査はフェアテストを軸にします。
- 収縮ストレス系は反応が出やすいものを選ぶ収縮ストレス系は、経験的に反応が出やすいと感じているテストを選んで使います。
- 複数の反応を重ねて判断するこれらの検査は感度や特異度がまだ十分に確立されておらず、陽性・陰性だけで確定できるものではありません。複数の検査を選んで重ね、症状の変化を見ながら判断していく位置づけとして使っています。
検査を網羅することよりも、腰椎由来の除外を起点に、伸張ストレス系と収縮ストレス系から反応の出やすいものを選んで重ねることが、実際の判断に近い進め方です。
腰椎疾患の鑑別は、並行して見直し続ける
梨状筋やDGSを疑う場面でも、腰椎由来の疾患の可能性は一度の確認で済ませるのではなく、経過の中で繰り返し見直します。
臀部からハムストリングス領域まで広くしびれが出ている場合は、より近位にある神経根の関与を改めて検討することがあります。
反対に、筋力や反射に目立った異常が見られないのに症状が続く場合は、坐骨神経痛やハムストリングスの痛みに紛れやすい後大腿皮神経の障害など、他の末梢神経の要因も候補に挙がります。この見分け方についてはこちらの記事でも触れています。
改善が停滞したときは、DGSの中の他の要因を見直す
梨状筋への介入を続けても反応が乏しい場合は、DGSの枠組みの中で、内閉鎖筋や大腿方形筋、ハムストリングスの近位部など、他の部位に視点を移すことがあります。
触診する部位やアプローチのやり方を変え、筋の緊張へのゆるめ方やストレッチのかけ方を変えてみて、症状がどう反応するかを確認していきます。どれか一つの筋に確実に絞り込むというより、反応を見ながら候補を絞っていく検査的な介入として進めていく考え方です。
- 梨状筋症候群は、DGS(深臀部症候群)という枠組みの中の一つの要因として捉える
- 検査は伸張ストレス系(フェアテストなど)と収縮ストレス系を組み合わせて見る
- 感度・特異度が確立していない検査が多く、網羅するより優先順位をつけて選ぶ
- 腰椎由来の可能性は、経過の中でも繰り返し確認する
- 改善が停滞したら、内閉鎖筋・大腿方形筋・ハムストリングスなど他のDGS要因にも目を向ける
梨状筋症候群やDGSは、検査だけで確定できる病態ではありません。とんとん整骨院では、除外できたところと、まだ可能性が残っているところを分けてお伝えし、その時点で分かっている範囲を正直にお話しすることを大切にしています。検査で確定できない病態をどう説明するかについてはこちらの記事で扱っています。
お尻から下肢にかけての痛みやしびれは、一つの検査や一つの筋だけで説明がつくとは限りません。テストを選んで重ね、腰椎由来の可能性を並行して見直しながら、反応を確認して進めていくことが、実際の臨床に近い考え方です。
検討の場で、お尻から下肢にかけて症状がある方について、まず腰そのものが原因かを確認検査で切り分けました。腰椎だけを反らす動きでは症状が誘発されず、腰由来ではなさそうだと判断しています。
一方で、梨状筋(お尻の深部にある筋肉)を直接押すと症状がやわらぐ反応があり、梨状筋のテストでも陽性でした。梨状筋の緊張や筋のなかの圧が高まることが神経を刺激する要因になりうるという流れで、梨状筋をゆるめる介入へ進めています。
腰由来を先に除いてから梨状筋のテストと圧痛で候補を絞り込んだこの進め方は、フェアテストを含む検査をどの順番で使うかを考える本記事の視点そのものです。





