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足が回外している感じがするのに検査で異常が出ない。腱反射と位置覚の確かめ方、精査へ送る判断

訴えと所見が噛み合わないときの検査手順

足が回外している感じがする。そう訴える方の足を診ても、見た目にも感覚の検査にも異常が出ないことがあります。院で確かめられる検査の順番と、病院での精査へつなぐ判断を取り上げます。

この記事について

このコラムでは、当院のカンファレンスで検討した相談をもとに、感覚の訴えと検査所見が噛み合わないときの確かめ方を取り上げています。腱反射を上肢と比べて読む方法、関節位置覚の簡便な検査、典型に合わないパターンの考え方、病院での精査へつなぐ判断まで触れています。

著者アイコン 伊藤聡史

検査はひとつの結果より、組み合わせで読むものだと考えています。訴えと所見が合わないときほど、順番どおりに確かめて、説明がつかない部分をはっきりさせることが大切です。

結論:触覚や痛覚に異常がないのに、筋力と運動の感覚だけが乏しいのは典型に合わないパターンです。院内の検査で確かめられるのは疑いの絞り込みまでで、画像検査を受けていない場合はまず病院での精査をすすめます。

感覚の訴えと所見が合わない

30代の男性から、右足が回外している感じがするという相談がありました。回外とは、足の裏が内側を向く方向へひねられる動きのことです。1年ほど前から徐々に始まり、はっきりしたきっかけはなく、スリッパが履きにくい、履いたまま歩きにくいという違和感が最初だったといいます。

ところが、実際に足を見ても回外は確認できませんでした。見た目に変わった様子はなく、土踏まずのアーチはむしろ高めに保たれています。本人の感覚と、外から見える所見が噛み合っていない状態です。

検査を進めると、次のような結果になりました。

  • 触覚・痛覚には左右差がない
  • 2点識別覚(2カ所に同時に触れて区別できるかを見る検査)も左右差がない
  • MMT(徒手筋力検査)では右足に筋力低下があり、足首を反らす背屈も、蹴り出す底屈も力が入りにくい
  • 前脛骨筋や長腓骨筋など、反対側と比べて抵抗に耐えられない筋が複数ある

感覚の検査はそろって正常なのに、筋力と、動かしている感覚だけが乏しい。この時点で、よくある足のトラブルの型には収まりにくいことが見えてきます。

腱反射は上肢を基準にして下肢を読む

筋力低下があるときに確かめたいのが腱反射です。ところがこのケースでは、アキレス腱反射が左右ともわずかにしか出ず、低下しているのか、もともとこの程度なのかが読めませんでした。

腱反射には個人差があり、健康な人でも弱くしか出ないタイプがいます。そこで基準になるのが上肢の腱反射です。

  1. 下肢の腱反射を左右で比べるアキレス腱反射などを見て、左右差があるかを確かめます。
  2. 両側とも弱ければ上肢を確かめる上腕二頭筋反射など、上肢の腱反射の出方を見ます。
  3. 上肢を基準に下肢を読む上肢も弱ければ、もともと腱反射が弱く出るタイプと考えられます。上肢がしっかり出るなら、両下肢の反射が弱いという所見として扱えます。

その人自身の基準を先に作ることで、下肢の弱さが個人差なのか、意味のある所見なのかを切り分けられます。

関節位置覚の簡便な確かめ方

関節位置覚は、目を閉じた状態で、関節が今どの角度にあるかを答えてもらう検査です。足部であれば、母趾(足の親指)をどれくらい曲げているかを答えてもらう方法や、足関節の底屈・背屈の角度を答えてもらう方法で確かめられます。特別な器具はいらず、ベッドの上でそのまま行えます。

動かしている感覚が乏しいという訴えに対しては、触覚や痛覚だけでなく、この位置覚まで確かめておくと、どの種類の感覚に問題があるのかを分けて考えられます。

感覚が正常で運動だけ乏しいのは非典型

ここで立ち止まりたいのが、検査結果の組み合わせです。末梢神経が絞扼、つまりどこかで圧迫されて起きる障害であれば、通常は感覚神経も一緒に障害されます。しびれや感覚の低下を伴うのが普通で、圧迫されている場所を叩くと響くチネル徴候が出ることもあります。

今回はそのどちらもなく、触覚・痛覚・識別覚がそろって正常です。感覚は保たれているのに、運動の機能と運動の感覚だけが乏しいという組み合わせは、末梢神経の圧迫では説明がつきにくい、典型に合わないパターンだといえます。

判断の目安

感覚の検査が正常なのに、筋力と運動の感覚だけが乏しいときは、よくある絞扼性の神経障害として扱いません。原因は院内で特定できる範囲を超えていると考え、無理に説明をつけるより、説明がつかないという事実そのものを精査につなぐ材料にします。

経過の速さと随伴症状を確かめる

もうひとつの軸が、経過の速さです。もし急に力が入らなくなったのであれば、脳卒中のような血管の病気をまず考えて、すぐに病院を受診してもらいます。今回は1年前からの緩やかな進行なので、急な発症で起こる病気は考えにくい経過です。

ただし、考えにくいというだけで、除外できたわけではありません。次のような随伴症状は問診で確かめておきます。

  • ロレツが回りにくい、しゃべりにくいことがないか
  • ふらつきがないか
  • 足以外に気になる全身の症状がないか

画像検査を受けていないなら、まず精査へ

このケースでは、レントゲンもMRI(磁気共鳴画像検査)も受けていませんでした。訴えが典型に合わず、院内の検査でも説明がつかないのであれば、施術で経過を追う前に、病院での精査をすすめるのが望ましい流れです。

診断名を院で推測して伝える必要はありません。確かめた検査の結果と、説明がつかない点をそのまま伝えれば、それが医師の判断材料になります。

運動を続けるかどうかも慎重に

動かしても、動いている感覚が乏しいまま運動を続けると、学習の面で悪い影響が出る可能性も考えられます。自分では動かしているつもりでも、狙った動きになっていない状態で反復することになるからです。

精査の結果が出るまでは、運動の内容や負荷を欲張らず、慎重に経過を見ていくことになります。

著者アイコン 伊藤聡史

検査で異常が出ないことも、それ自体がひとつの所見です。確かめたことと説明がつかないことをそのまま病院へ伝えることが、結果的に一番の近道になると考えています。

伊藤聡史
株式会社とんとん/とんとん整骨院。臨床技術責任者。柔道整復師。

臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」講師。院内では臨床研修責任者として若手の技術指導を担い、論文抄読会の主催など、根拠に基づく施術(EBM)の浸透に取り組んでいる。

監修:瀬谷崎将也
とんとん整骨院代表・柔道整復師

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