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橈骨神経の絞扼点は近位から6か所。C6・C7神経根との見分け方

下垂手やしびれを、頚椎と末梢の絞扼で考え分ける

橈骨神経(とうこつしんけい)の症状は、手首やテニス肘のあたりだけで起きるとは限りません。神経は上腕から前腕まで複数の場所で締めつけを受けます。さらに頚椎のC6・C7神経根障害でも似た領域に症状が出るため、近位から絞扼点を追い、頚椎との切り分けまで含めて考えます。

この記事について

橈骨神経の代表的な絞扼点を近位から遠位へ整理し、頚椎のC6・C7神経根障害との見分け方を見ていきます。尺骨神経の絞扼マップ、橈骨神経浅枝の障害、テニス肘の評価など重なるテーマは既存記事へつなぎ、ここでは絞扼点をたどる考え方と頚椎との切り分けに絞ります。

伊藤聡史 伊藤聡史

橈骨神経は、上腕の後ろから前腕までを縫うように走り、いくつもの締めつけポイントを通ります。手首やテニス肘で止めず、近位からたどる視点を持つと、症状の説明がつきやすくなります。

結論:橈骨神経の症状は、近位から遠位までの絞扼点と、頚椎C6・C7神経根障害の両方を視野に入れて考えます。手首やテニス肘の一点で決めず、症状の出る領域と所見の組み合わせでたどります。

橈骨神経は、手首やテニス肘だけの問題ではない

橈骨神経は、上腕の後ろを回り込み、肘の外側を通って前腕の伸筋群や手の甲の感覚へとつながります。途中で運動をになう枝(後骨間神経、こうこっかんしんけい)と、感覚をになう枝(浅枝)に分かれ、それぞれ別の場所で締めつけを受けます。

そのため、手首や肘の外側だけを見ていると、上腕側の絞扼や、頚椎からの神経根障害を見落とすことがあります。まずは神経が締めつけを受けやすい場所を、近位から順に思い出せるようにしておきます。

近位から遠位へ、代表的な6つの絞扼点

橈骨神経の絞扼点は、上腕の付け根から前腕の遠位寄りまで、複数あります。症状の出る場所と、どの絞扼点より遠位に所見が及ぶかを合わせて読むと、当たりをつけやすくなります。

1. 三角間隙

三角間隙(トライアンギュラー・インターバル)は、橈骨神経が上腕の後面へ回り込む通り道にあたります。

2. 上腕骨の橈骨神経溝

上腕骨の後面を斜めに走る溝です。骨折や長時間の圧迫で障害を受けやすい場所です。

3. 上腕外側筋間中隔

神経が後ろから前へ抜けるときにくぐる、線維性の壁にあたる部分です。

4. 短橈側手根伸筋の起始部

肘の外側、前腕伸筋群が起こる付近で締めつけを受けることがあります。

5. フローゼ腱弓

回外筋(かいがいきん)の近位縁にある腱のアーチです。運動枝の後骨間神経がここをくぐります。

6. 伸筋腱どうしの間

腕橈骨筋腱と長橈側手根伸筋腱の間など、前腕の遠位寄りで挟まれることがあります。

運動の枝か、感覚の枝か、で症状が変わる

橈骨神経は途中で運動の枝と感覚の枝に分かれます。どの絞扼点かによって、出る症状が変わるのが手がかりです。

運動をになう後骨間神経(フローゼ腱弓の前後)が締めつけを受けると、指や手首が伸ばしにくい、力が入りにくいといった運動の訴えが出やすくなります。一方、感覚をになう浅枝が遠位で締めつけを受けると、手の甲の親指側のしびれや感覚の鈍さが中心になります。手の甲の感覚だけの症状については、既存記事で詳しく扱っています。

C6・C7神経根障害との類似と切り分け

注意したいのは、頚椎のC6・C7神経根障害でも、橈骨神経障害と似た領域に症状が出ることです。前腕の外側から手の甲、親指や人差し指のあたりは、橈骨神経の支配領域と頚椎神経根の支配領域が重なります。

切り分けの手がかりは、首の動きで症状が変わるか、症状が一本の末梢神経の走行に収まるか、それとも特定の神経根のレベル(C6、C7)の分布に沿うかです。頚椎を反らせて回旋し圧迫を加えるスパーリングテストなどの誘発と、絞扼点の圧痛やチネル徴候(神経をたたくとしびれが走る所見)を合わせて読みます。頚椎神経根症の評価手順は既存記事にまとめています。

テニス肘や後骨間神経症候群との重なり

肘の外側の痛みは、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)として説明されることが多い部位です。けれども、フローゼ腱弓での後骨間神経の締めつけは、テニス肘と近い場所に症状が出るため、重なって見えることがあります。

テニス肘らしい痛みが長く続く、握力が落ちる、指が伸ばしにくいといった訴えが混じるときは、後骨間神経の関与も思い出します。テニス肘そのものの評価は既存記事で扱っています。

確認していく順番

絞扼点が多いからこそ、順番を決めて確認すると迷いにくくなります。まず問診で、症状の出る領域、首の動きや前腕の使い方との関係、しびれか運動の弱さかを聞きます。

次に、徒手筋力検査(MMT、マニュアル・マッスル・テスト)で手首や指の伸展、感覚の左右差を確認します。そのうえで、近位から各絞扼点の圧痛やチネル徴候、頚椎の誘発テストを合わせ、症状が再現される場所と所見の方向がそろうかを見ます。検査の細かな手順は既存記事につなぎます。

伊藤聡史 伊藤聡史

絞扼点をひとつに決め打ちせず、近位から順に確認します。そのうえで頚椎神経根と末梢のどちらが主役かを考えると、似た領域の症状でも捉えやすくなります。

はじめに押さえたい危険サイン

橈骨神経の絞扼を考える前に、危険サインを確認します。次のような場合は、施術で反応を見る前に医療機関での確認を優先する場面があります。

  • 手首や指が伸ばせない、下垂手(かすいしゅ)の状態がある
  • 筋力低下が進んでいる、握力が急に落ちた
  • 外傷や骨折のあとに、しびれや脱力が出てきた
  • 首の症状と同時に、両手や足にも症状が広がる
  • 急に強く発症した、原因のはっきりしない症状が続く
重要

橈骨神経の症状は、近位から遠位までの絞扼点と、頚椎C6・C7神経根障害の両方を確認したうえで考えます。手首やテニス肘の一点で決めず、症状の領域と所見をそろえて読みます。下垂手や進行する筋力低下、外傷後の脱力がある場合は、医療機関での評価を優先します。

近位の絞扼点から頚椎まで、橈骨神経をたどって確かめる

橈骨神経の絞扼点は、上腕の付け根から前腕の遠位まで複数あります。さらに頚椎のC6・C7神経根障害でも似た領域に症状が出ます。だからこそ、ひとつの場所で決めずに、近位から絞扼点を追い、頚椎との切り分けまで含めて考えます。

運動の枝か感覚の枝か、症状が末梢神経の走行に収まるか神経根の分布に沿うか。所見をひとつずつつなげて読むことが、見落としを減らす近道になります。

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橈骨神経の絞扼点を近位からたどり、頚椎C6・C7神経根との重なりまで頭に入れておくと、手の甲のしびれや指の伸ばしにくさの見え方が変わります。場所を決め打ちしないことが、見落としを減らす一歩です。

伊藤聡史
株式会社とんとん/とんとん整骨院。臨床技術責任者。柔道整復師。

臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」講師。院内では臨床研修責任者として若手の技術指導を担い、論文抄読会の主催など、根拠に基づく施術(EBM)の浸透に取り組んでいる。

監修:瀬谷崎将也
とんとん整骨院代表・柔道整復師

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