バビンスキー徴候とは?病的反射と足クローヌスで上位運動ニューロンを調べる
施術・検査ガイド
足の裏をこすって母趾が反る。
それが伝える「上位」のサイン
病的反射は、通常は出ないはずの反射が出ていないかを見る検査です。バビンスキー徴候や足クローヌスなど、上位運動ニューロンの関与を疑う所見について、見方と読み方を確認します。
バビンスキー徴候は、足底を刺激したときの母趾の反応をみる病的反射で、錐体路(皮質脊髄路)の障害を疑う手がかりになります。ここでは、病的反射で何を見るのか、バビンスキー徴候のとり方、チャドックやオッペンハイムなど他の病的反射、足クローヌス(間代)の見方、深部腱反射の亢進と合わせた読み方をまとめています。
結論:病的反射は、単独で診断を決める検査ではなく、深部腱反射の亢進やホフマン反射などと合わせて、上位運動ニューロンの関与を整理するための検査として扱うのが実用的です。
病的反射は、健康な成人では通常みられない反射のことです。これらが出ている場合は、脳や脊髄といった上位運動ニューロン(錐体路)の関与を疑う手がかりになります。代表的なものがバビンスキー徴候です。
病的反射で何が分かるのか?
深部腱反射が「反射があるか・左右差があるか」を見る検査だとすると、病的反射は「本来出ないはずの反射が出ていないか」を見る検査です。錐体路が障害されると、抑えられていた反射が現れることがあります。
| 正常な反応 | 足底の外側をこすると、母趾は底屈(足の裏側へ曲がる)のが通常の反応です。 |
|---|---|
| 病的な反応 | 母趾が背屈(足の甲側へ反る)し、他の足趾が扇状に開くことがあります。これをバビンスキー徴候の陽性と呼びます。 |
| 見るべきポイント | 反応の有無だけでなく、左右差、再現性、深部腱反射の亢進やホフマン反射など他の所見との整合性を確認します。 |
足底をこすると反射的に足を引っ込める動き(逃避反応)が出ることがあります。くすぐったさによる動きと病的反射を混同しないよう、母趾がどちらへ動くかを落ち着いて確認します。
バビンスキー徴候のやり方
バビンスキー徴候は、足底の外側を踵からつま先へ向かってこすり、母趾の反応を確認します。強くこすりすぎず、逃避反応を誘発しない程度の刺激で行います。
- 足をリラックスさせる患者さんに仰向けで寝てもらい、下肢の力を抜いてもらいます。
- 足底の外側をこする先の鈍いもので、踵から小趾側の外側縁に沿い、弧を描くように母趾の付け根へ向けてゆっくりこすります。母趾の基節部まで達しないところで止めます。
- 母趾の動きを見る母趾が背屈するか、他の足趾が扇状に開く(開扇現象)かを確認します。左右で比べます。
母趾の背屈と開扇現象がそろって出る場合を陽性とします。ただし、くすぐったさによる動きや随意的な動きと区別しにくいことがあるため、再現性と左右差を丁寧に確認します。
脳卒中や頚椎症性脊髄症を含む錐体路障害を対象にした研究(2018年)では、バビンスキー徴候は感度49%・特異度85%前後と報告されています。感度は高くありませんが特異度は比較的高く、陽性のときに錐体路障害の確からしさを上げる使い方に向きます。一方、一次医療(患者さんが最初に受診する場)を対象にした研究(2015年)では、感度・特異度ともにこれより低い値が報告されており、来院される方の集団によって数値は変わります。ホフマン反射やトレムナー反射との読み比べは病的反射の検査精度の記事で扱っています。
他の病的反射も合わせて見る
バビンスキー徴候と同じ方向を見る病的反射がいくつかあります。刺激する場所が違うだけで、母趾の背屈という同じ反応を引き出そうとするものです。
| チャドック徴候 | 外果(外くるぶし)の下から足背の外側をこすり、母趾の背屈を見ます。 |
|---|---|
| オッペンハイム徴候 | 脛骨前面を上から下へ強めに擦り下ろし、母趾の背屈を見ます。 |
| ホフマン反射 | 上肢の病的反射です。中指の爪をはじき、母指が内転・屈曲するかを見ます。上肢側の上位運動ニューロン徴候として合わせて確認します。 |
足クローヌス(間代)の見方
足クローヌスは、足関節を急に背屈させて保持したときに、律動的な底屈・背屈のふるえが繰り返される反応です。これも深部腱反射の亢進と同じ方向の所見です。
- 膝を軽く曲げて支える下肢の力を抜いてもらい、膝を軽く曲げた状態で下腿を支えます。
- 足関節を急に背屈させる足部を持ち、すばやく背屈させてそのまま軽く保持します。
- ふるえが続くかを見る底屈・背屈のふるえが数回で止まるか、持続するかを確認します。持続する場合は亢進した所見として扱います。
数回で止まるふるえは正常でもみられることがあります。左右差があるか、止まらずに続くか(持続性クローヌス)を見ると、亢進の所見として意味を持ちます。
深部腱反射の亢進とセットで読む
病的反射や足クローヌスは、単独で何かを決める所見ではありません。深部腱反射の亢進、ホフマン反射、巧緻運動の低下などと同じ方向を向いているかで読んでいきます。
- 深部腱反射が亢進しているかを合わせて確認する
- ホフマン反射など上肢側の病的反射も見る
- 手の巧緻運動の低下や歩きにくさを伴っていないか確認する
- 左右差と再現性を、同じ条件で比べる
- これらがそろう場合は、脊髄や脳のレベルの関与を含めて慎重に考える
病的反射は、「出たからこの疾患」と単独で決める検査ではなく、上位運動ニューロン徴候が一貫してそろっているかを見る検査です。左右差と整合性を丁寧に確認することが大切です。
関連症状:こんな訴えと合わせて見る
- 手足に力が入りにくい、動かしにくい
- 手の細かい動作がしにくい、箸やボタンが使いにくい
- 歩きにくさやふらつきがある
- 両手・両脚に広がるしびれがある
- 深部腱反射の亢進と合わせて神経学的所見を整理したい
手足の力の入りにくさが進む、歩きにくさやふらつきがある、手の細かい動作が急に低下した、排尿・排便の異常があるといった場合は、まず医療機関での確認が必要になることがあります。
病的反射は「上位運動ニューロンの一貫性」を読み取る
バビンスキー徴候や足クローヌスは、本来は出ないはずの反射が出ていないかを見る検査です。ただし、これらだけで原因を決めることはできません。
大切なのは、深部腱反射の亢進やホフマン反射、巧緻運動の低下など、上位運動ニューロン徴候が同じ方向にそろっているかを確認することです。
とんとん整骨院では、症状の場所だけでなく、反射、筋力、感覚、動作での変化を合わせて確認し、身体の状態を多角的に見極めることを大切にしています。
40代男性、坐骨神経痛のような殿部から大腿にかけての症状。SLRや梨状筋のストレステストはいずれも陰性で、歩行では足を引きずる様子がありました。危険な疾患が隠れていないかの確認が相談の主眼でした。
検討で注目されたのは、膝の腱反射(膝蓋腱反射)が亢進し、アキレス腱反射が減弱していた点です。腱反射の亢進は、背骨の中を通る脊髄など上位の神経の障害で起こることがあり、確認のためにクローヌス(足首を素早く曲げた時に反復して起こる不随意な動き)や筋の緊張、さらに下肢だけでなく上肢の反射も左右で比べるとよいという意見が出ました。症状が1年以上続き反対側にも及びつつある経過も、慎重に扱う理由に挙がりました。
腱反射の亢進やクローヌスといった病的反射を手がかりに上位運動ニューロンの障害を調べる点は、バビンスキー徴候を扱う本記事の考え方と同じです。
この記事で紹介した検査精度と実施方法の根拠として参照した主な文献です。
- Appasamy PT, Dan TA, Bandyopadhyay V, Mathew V, Jeyaseelan V, Babu S, et al. Accuracy and reliability of Babinski sign versus finger and foot tapping in the diagnosis of corticospinal tract lesions. Neurol India. 2018;66(5):1377-1380.
- Tejus MN, Singh V, Ramesh A, Kumar VR, Maurya RP, Madhugiri VS. An evaluation of the finger flexion, Hoffmann and plantar reflexes as markers of cervical spinal cord compression: a comparative clinical study. Clin Neurol Neurosurg. 2015;134:12-16.
この記事を書いた髙原佑輔は、とんとん整骨院 東武練馬店に勤務しています。東武練馬駅から徒歩すぐ。練馬区北町・徳丸・下赤塚エリアの方が多く来院されています。





