メンテナンス通院をどう定義するか。指標で説明し、頻度は患者と決める
セラピスト向け
メンテナンスという言葉に、中身を持たせる
症状が落ち着いた後も通院が続く、いわゆる「メンテナンス」。呼び方は定着していても、中身を聞かれると答えに迷う施術者は多いはずです。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで実際に出た相談をもとに、メンテナンスをどう定義し、患者さんと頻度をどう決めていくかを考えます。
相談を持ち込んだのは、症状が良くなった後の通院、いわゆるメンテナンスについて、部下やスタッフにどう説明したらいいか悩んでいるという施術者でした。
自分ひとりで患者さんに対応している分にはその場その場でなんとかなっている感覚がある一方、それを共通の指標として言葉にしようとすると、とたんに「ふわっとしている」ことに気づく、という相談です。
参加した治療家からは、こんな運用の声が挙がりました。
- 運動を課題として出し、1ヶ月に1回チェックする
- 事実上ほとんどリラクゼーションに近い運用になっている
- 治療とは別に「全身のメンテナンス」というメニューを設け、超音波なども使いながら、症状の有無にかかわらず月1回前後で来てもらう
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎急性と慢性で、メンテナンスの意味が変わる
ぎっくり腰のような急性の症状は、たいてい数回の施術で終わりが見えます。検討の中でも「初発の急性腰痛は、最初の段階で四、五回で終わります、と伝える」という発言がありました。再発リスクが高いという事実は伝えても、必要以上に通院をあおらない、という線引きです。
一方で、慢性化した症状のように、そもそも治癒という区切りを前提にしない疾患もあります。慢性疼痛を期間だけで判断できるとは限らないのと同じで、この場合の通院は、良くする作業というより、今の状態を保つ作業に近くなります。
メンテナンスという言葉が本当に意味を持つのは、この慢性側の通院だという捉え方が、参加者の間で共有されていました。
症状でなく、指標で説明する
難しいのは、慢性側の通院を患者さんにどう説明するかです。ここで出てきたのが、可動域・筋の緊張度・姿勢・筋力といった、測って確認できる指標を材料にする考え方でした。
「症状は出ていないけれど、当時はこの動きの悪さが原因で症状が出ていたと考えられる。だから症状がなくなった今も、ここの動きを保っておいたほうがいい」という理屈です。
その指標と症状との関連が実際にどこまで裏付けられるかは、正直なところ確かめようのない部分もあります。それでも、患者さんに向けた説明としては筋が通りやすく、納得を得やすいという指摘でした。
可動域や筋緊張度、姿勢などを定期的に確認しながら、間隔をあけると少しずつ元に戻り、来院のたびにまた整えていく。この繰り返しこそが、実務としてのメンテナンスの中身だという捉え方も共有されました。
メンテナンスの目的は、可動域や筋力をどんどん伸ばすことではなく、症状が出ない範囲を保つことです。この違いを患者さんと合わせておくと、頻度を落とす提案も伝わりやすくなります。
「どんどん良くする」ではなく「保つ」
開脚できるようになりたいといった、明確に伸ばしたい目標がある場合は別ですが、メンテナンス目的の通院で「どんどん良くしましょう」と伝えると実態とずれてしまいます。目指しているのは、多少の波があっても症状が出ない範囲を保つことで、そこに合わせた言葉を選ぶほうが実態に合います。
呼び方についても意見が出ました。リラクゼーションと呼ぶと、患者さんにとっては「受けたいから受ける」ものになり、メンテナンスと呼ぶと「通っておいたほうがいい」という必要性が伝わりやすくなる、という指摘です。内容がほぼ同じだとしても、呼び方ひとつで患者さんの受け止め方は変わります。
腰痛用のコルセットを本人の筋力まで肩代わりする形で使い続けるとかえって狙いとずれるのと同じで、自分でできることまで通院任せにしてしまわないよう、目的を保つための通院だと伝える意識が要ります。
頻度は、経過を見ながら患者と決めていく
- 確認の中身を切り替える頻度の落とし方の実例として、2週に1回の通院で来院のたびに首の可動域や辛さを確認する代わりに、「家でできていたか」を聞くやり方に切り替えたところ、うまく回るようになったという担当者もいました。
- できていなければその場で補うできていなければ、その場でセルフトレーニングを加える。
- 段階を踏んで間隔をあける2週に1回のままで変化が乏しければ、月1回に間隔をあける。段階を踏んで頻度を落としていく方法です。
大事なのは、最初にメンテナンスの方向性を伝えたうえで、経過を見ながら患者さんの価値観とすり合わせて頻度を決めていくことです。施術者の側で回数を最初から決め打ちしたり、逆に引き留めにかかったりするのではなく、患者さんと一緒に落としどころを探る考え方です。
検査のたびに細かく確認する必要が本当にあるかどうかも論点になりました。1年ほぼ同じ状態が続いている患者さんに毎回一から検査をする必要性は高くないという声がある一方、ルーティン化した通院ほど、良くしたい側の熱意と、患者さん自身がそこまで求めていない温度差が生まれやすいという指摘もありました。
可動域の左右差を本人がどこまで気にしているかなど、目的をすり合わせ直す場面は、通院が10回、20回と重なるほど起きやすいようです。
- 急性の症状と、治癒の区切りを前提にしない慢性の症状は分けて考える
- 慢性側の通院は、良くする作業でなく今の状態を保つ作業として説明する
- 可動域・筋緊張度・姿勢・筋力など、測って確認できる指標を説明の材料にする
- 「どんどん良くする」でなく「症状が出ない範囲を保つ」という言葉を選ぶ
- 頻度は方向性を伝えたうえで、経過を見ながら患者さんと一緒に決めていく
- メンテナンスの定義を院内で揃えておくと、担当が変わっても説明が保たれる
定義を揃えておくと、担当が変わっても説明は保たれる
相談の出発点は、メンテナンスという言葉に対するスタッフごとの説明のばらつきでした。可動域や筋緊張度といった指標を軸に置き、急性と慢性を分けて考える捉え方を院内で共有しておけば、対応するスタッフが変わっても、患者さんが受け取る説明は大きく変わりません。
何を保つために通ってもらっているのかを、施術者自身が言葉にできることが、まず要るのだと思います。
瀬谷崎





