痛みを0か100かで表現する患者さんの変化をどう測るか。指標動作を1つ決める評価の工夫
セラピスト向け
痛いか、痛くないか。その答えのままで経過を追う
「すごく痛いです」「全然痛くないです」。痛みの程度を尋ねても、答えがいつも0か100かのどちらかで返ってくる患者さんがいます。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで実際に挙がった相談をもとに、答え方を変えてもらうのではなく、こちらの測り方を変えるという発想で経過確認の方法を考えます。
相談の内容はこうでした。筋肉痛のような痛みも、症状そのものの痛みも、施術で効いている感じの痛みも、良くなってきた後のわずかな痛みも、すべて「痛いですね」と表現される患者さんがいる。病態把握のために強さや質を聞きたいし、経過が良好かどうかも確認したい。けれど深く聞こうとしすぎると関係性が崩れそうで、痛みに極端に注意を向けさせることにもつながりかねない、という悩みです。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎0か100かも、その方なりの伝え方
NRS(エヌアールエス・数値評価スケール)のように痛みを10段階の数字で答えるのは、実は誰にでも簡単なことではありません。患者さんの立場からすると、痛いのは痛いのであって、それをどう言語化していいかわからない、という事情は十分に想像できます。
つまり0か100かという表現は、その方なりの誠実な伝え方の1つです。そこを施術者の望む形式に矯正しようとするほど、関係性の方が先に削れていきます。
だとすれば動かすべきは、患者さんの答え方ではなく、こちらの質問の設計です。数字が取れない前提でも経過を追える仕組みを、施術者の側に持っておくことになります。
指標動作を1つ決めて、聞くことを絞る
最初の工夫は、質問を1点に絞る方法です。何を聞いても「痛い」が返ってくるなら、聞く対象をあらかじめ1つに固定してしまいます。
- 一番痛い動作を1つだけ聞くどの動きでも痛いと返ってきても、そのなかで特に痛みが強く出る動作を1つ確認しておきます。前屈でも階段でも、生活のなかの具体的な動きで構いません。
- 深追いせずに施術へ移る強さや質の質問はそこで切り上げて、先に施術をして帰ってもらいます。問診が長引く時間そのものが、関係性の崩れやすい時間だからです。
- 次回、その動作だけを確認する施術後や次の来院時に、決めておいた動作をしたときどうだったかだけを聞きます。比較の軸が固定されるので、答えが二択のままでも変化を拾えます。
この方法の利点は、経過確認の精度だけではありません。質問が短く済むぶん、痛みへフォーカスさせる場面自体を減らせます。
質問の意図を先に伝えると、答えが変わることがある
もう1つの工夫は、何のためにそれを聞いているのかを、質問より先に説明することです。たとえば「通院の間隔を開けても大丈夫かどうかの指標にしたいので、細かく聞いています」と伝えてから尋ねる形です。
質問の意図が伝わっていなかっただけで、「そういう意味で聞いているなら」と具体的に答えてくれる患者さんは確かにいます。回答の質が変わるかどうか、一度試す価値のある一手です。
- 質問の前に、何のために聞くのか(通院間隔の目安にしたい、など)を一言添える
- NRS(数値評価スケール)で答えにくそうなら、VAS(ブイエーエス・視覚アナログスケール)など別の答え方を試す
- 聞く項目は指標動作を中心に絞り、同じ答えが続くようなら深追いはしない
意図を説明しても答えが変わらない患者さんはいます。その場合は言葉での数値化はいったん脇に置き、指標動作の確認や、可動域など観察できる所見で経過を追う側に切り替えます。記録の道具としては痛み日記や質問紙もありますが、これらの使いどころは別の記事で扱っています。
通院が続いていること自体が、1つの答えかもしれない
相談のケースでは、その患者さんは数か月にわたって週1回の通院を続けていました。答えは0か100かのままでも、通院の足が続いているという事実がある。効果をまったく感じていなければ、週1回の通院が数か月続くとは考えにくいはずです。
言葉の上では「痛いですね」でも、本人のなかでは20くらいまで減っている、少しずつ軽くなっている感覚がある、という可能性は十分にあります。だとすれば、無理に深掘りして今の関係を揺らすより、現状の関係性を保ちながらできる限りの施術と対応を続けることも、立派な選択肢です。
0か100かの答え方のままでも通院が続いているなら、それ自体が治療への満足や信頼の表れである可能性が高いと考えられます。深掘りは急がず、指標動作の確認だけを続けて経過を追います。通院間隔の相談は、患者さんの側から不満のサインが見えたときにあらためて切り出せば間に合います。
測り方は、こちらの側でいくらでも変えられる
0か100かという表現は、その患者さんの1つの伝え方です。指標動作を決める、意図を先に伝える、答えやすいスケールに替える。施術者側で動かせる変数はいくつもあり、どれも患者さんに変化を求めません。答え方はそのままで、経過はこちらの設計で追う。この順番なら、評価と関係性を両立しやすくなります。
瀬谷崎





